2020/10/29

えちボ(越前市ボードゲームの会) 10月ゲーム会(2020/10/18)

 18日の日曜日は地元越前市のオープンゲーム会“えちボ”に主催として参加してきました。

前日のゲーム会の記事にも書いたように土曜日は肌寒くどんよりとした空模様の一日でしたが、一転この日は朝から秋晴れの気持ち良い青空が朝から広がりました。

会場の準備もあって当日は早めに自宅を出発、会場までの道すがらコンビニでホットコーヒーとサンドイッチを買って施設入り、午前8時半頃に受付を済ませました。

この日は事前の予約状況から土足禁止でテーブルや椅子も常備されていない部屋にせざるを得なかったのですが、当日受付を済ませてみると別の部屋に空きがあることが判明、急遽会場を変更させてもらいました。


この日はこのアクションゲームから開始。テーブルカーリング。2人。

オリンピックの正式競技にもなっているスポーツのテーブルゲーム化。ストーンを模したコマにはベアリング状にボールがはめこまれており、これが実際の競技のようにツルツルとマットの上を滑っていきます。

もっともスィープにあたる部分は割愛されているため投擲のみで狙った位置に放り込むことが要求されます。

スポーツのボードゲーム化は個人的には鬼門という印象があるのですが、このカーリングは“氷上のチェス”とも呼ばれているように、頭脳戦心理戦のウェイトが大きい競技であることもあって、テーブルゲームとの相性も良いように思いました。7.0

自分の持ち込みではなかったのですがアマゾンで比較的安く入手できるそうで、ひとつ持っていても悪くないかなと思ったり。ただ広めのテーブルが必要になるかもしれません。


続いてクニツィアのロール&ライト。4人。mosesのドイツ版で。

5×5の25マスにダイスロールの出目によって指定された6種類のシンボルのいずれかをマークしていきます。

ダイスは2個を同時に振り、出目は隣接する2マスとしてマークしなければなりません。制約はそれくらいで、書く位置などの制限もなし。

同じシンボルが多く並んでいるほど高得点というシンプル極まりないルールです。

面白いと思ったのは人間の心理としてどうしても25マス全てを綺麗に埋めたくなるのですが、実際には勝者は2マス残してしまったプレイヤーだったりして、“マスを捨てる”ことも時には必要なのかなと。まあ全埋めを優先して得点を犠牲にしていてはもちろん駄目なわけで、人間の本能との折り合いをいかに上手くつけられるかも本作の妙味なのかもしれませんね。6.5


クニツィア続投。テイクイット!。4人。

イッツマインやいただき!の邦題(メビウス)でも有名なクニツィアの旧作を今回初プレイ。

いずれかのプレイヤーが山札から1枚ずつカードを場に並べていきます。欲しいところで「いただき!」ということで場のカード全てを獲得。この宣言は各プレイヤー3回までというシンプルルール。

カードにはペア、ジョーカー、10、通常といくつかの種類があり、中にはマイナス点をもたらすものも少なくなく、またゲームが進行することでプレイヤー毎に取りたいカード、取りたくないカードの偏りが出てくるのもクニツィアらしく、本作のポイントになっているかと。6.5

どちらが早かったか問題は避けては通れないのでベルなりなんなりあったほうがいいかもしれませんね。


午前中はこの3タイトルで〆て、ここから4人で昼食休憩に。もう1卓は話題の新作“アルマ・マータ”が朝イチから立っていたのですがまだしばらく終わりそうにもなかったので4人だけ先にお昼にしました。

お昼は会場から歩いて3分の中華料理店へ。会場には窓がなく、外の様子が皆目分からないのですが、外に出てみると素晴らしい晴天で、雲ひとつない青空が広がる中、4人で談笑しつつお店まで歩きました。

この日の私のオーダー、豚肉細切れチャーハン。安定の美味しさ。

会場に戻るとこのタイミングで参加のプレイヤーも何人かいて午後は3卓での開始となりました。


さらにクニツィア続投w バビロニア。4人。

“ネブカドネザル2世の時代、新バビロニア帝国はもっとも豊かな時代を向かえていた。チグリス川とユーフラテス川に挟まれた肥沃な土地で、網の目のような交易ルートを確立し、それぞれが部族の繁栄を目指していた”

というわけで期せずしてクニツィアが続きますw 昨年のエッセン新作をアークライトの国内流通版で。

手番の流れはシンプルで、①派閥コマの配置、②得点計算、③派閥コマの補充、という三段階の流れ。

派閥コマは大別して“貴族”と“農民”の2種類があり、やや性質は異なります。またジグラットを包囲した際マジョリティを得ることで場のジグラットカードを得ます。このカードがプレイヤーに固有の能力をもたらします。

砂漠を越えてからじっくりとクニツィアがシステムに磨きをかけてきた一連の陣取りタイトルの最新作に、名作チグリス&ユーフラテスのテーマを載せてきたと解釈することもでき、また完成度の高さもあって、ここらでひとつ区切りとなるようなクニツィアの意気込みが感じられる好タイトルという印象。

展開において、そのマスにどのプレイヤーがコマを置いたかでゲームの勝敗に大きく影響を与えそうな重要なマスが発生することから、そのマスをめぐるヒリつくような軋轢のインタラクションがほぼほぼ必ず発生する点はインタラクションに対する個々のプレイヤーの好みが試されるところで、最近のソロ寄りの薄いインタラクションに慣れ親しんでいるとここに拒否反応を起こしかねない気もしました。

リンクをつなげるのか、ジグラットに広く手を伸ばすのか、あるいはその他といった相反する複数のスコアリングにおいて、他者の動向や自分の手持ちコマの状況も鑑みつつ、バランス良く自陣を伸ばせたプレイヤーが最後には勝利するのかなと。

これをやっていれば勝てるという必勝法はもちろんありませんし、実プレイ60分で終わる収束性の良さながら、これぞ陣取りという濃厚な体験ができる秀作かと。8.0


“黎明期の人類。彼らは森林や砂漠など散り散りになって生活していた。やがて彼らは故郷を離れ、他の部族に出会い、そしてそこで知識や文化を交換していった”

ピュアユーロの傑作“王と枢機卿”のシャハト自身によるリメイク、“イワリ”を4人で。

今回のセッションは海外では流通の始まった私の持込みによる通常版で、ルール上は場札が4枚になったことや一部の地域での最終得点計算が変更になった以外には大きな変更はなく、あの有名な3ー2ー1ルールを踏襲した、真っ当な新アートワーク、新コンポーネント版王と枢機卿とでも呼びたいもので、当然ながら序盤からヒリヒリするような緊張感のあるプレイングフィールはあのタイトルそのもの。

大きく変わったアートワークはファンタジー調のもので、マテウス・ミザクによるイラストは間違いなく美しく、ハンドとして手に持って眺めているだけで贅沢な気分になりました。

ただオリジナルのフランツ・フォービンケルによる中世ヨーロッパがテーマのアートワークも素晴らしかっただけに、ここはどちらがより好みなのかはプレイヤーにより意見は分かれるところでしょうね。

ルール上の最大の変更は、特定の条件を達成することで獲得できる“偉業”で、このアイテムが配置されたエリアは最終決算の得点が2倍、3倍…となるところ。

当然ながらこの大きな得点が獲得できる可能性のあるエリアは競争率が高まる注目の的となり、起伏に盛り上がりをもたらすことを意図したルール上のデザインだと思ったのですが、今回のセッションでは参加者の意識が不十分だったせいもあるのか、熾烈な争いが起こることもなく決着してしまった印象で、こちらの予想を裏切り、不完全燃焼のような形で終わってしまったのが残念でした。

この点が今回のセッションで残った大きな疑問点の一つで、オリジナル前作の愛好者たちによる終了後の感想戦もいつになく長引きました。

僕は何より、一個一個の駒が一点になる潔さや、マジョリティ、上限値をめぐって、その“駒一個”の重みが好きだったせいもあって、そしてそこにこそシャハトの魅力を感じていたので、本作の決算方法が今風にアップデートされたものであろうと個人的には解釈しているのですが、オリジナルは超えていないというのが一戦してみての率直な感想です。7.0

まだ結論を出すにはいささか早いと思いますし、このあたりは今後プレイを重ねてみて判断したいところです。


これはヤッツィー2020か。チリダイスを希望者多数につき強引に5人で。

六面体ダイスが6つ。ただしそれぞれ1、2、3、4、5、6の目が赤くなっています。

手番でこの6つのダイスを振ります。振り直しは一手番で何回でもできますが、ゲーム全体を通して30回までというライフ制。また赤の出目は好きな目に変更できます。

この条件で役を作り、合計得点で雌雄を決します。

何回でも振り直し可能、そして赤は好きな目にできるというのがなんとも刺激的かつ背徳的で、そこがダイスロールのギャンブル性と非常に相性がよく、狙いはバッチリ。

中辛、激辛、超激辛という高難度ながら一発逆転も狙える高得点が可能な特殊な役もまたプレイヤーの挑戦欲を刺激するスパイスとしてピリリと効いており、なるほどこの2020年に出る意義はあるなあと。

ただヤッツィー系のダウンタイムの長さもまた健在で、ここが僕には最大のマイナスポイントに。まあこれは避けては通れないんですけどね。

テーマの通りゲームは非常に刺激的なんですが、収束性に寛容なら、という条件付きでお薦めの佳作。7.0


“すべての動物たちがリゾートを満喫しています。そんな光景をあなたはうらめしく眺めるだけ。なぜならあなたはナマケモノで、自分で移動するなんて考えられないから。でもその幸せそうな景色をあきらめきれなかったあなたはある妙案を思いつきました…”

このタイトルでこの日のゲーム会を〆ました。ファスト・スロースを5人で。

フリーゼの2019年作でメカニクスはピック&デリバーです。

主人公というかプレイヤーはナマケモノなのですが、これを一種の荷物と見なすことも可能で、この荷物を周りの各種動物コマが運ぶことで目的となる各地の木の葉を集めていきます。通常のピック&デリバーとは主客の視点が逆になっており、このあたりフリーゼらしい気もしました。

手番の流れは①ドロー、②プレイ、③ハンドリミットのチェック、というシンプルなもの。

これを繰り返し、木の葉を最初に規定数集めたプレイヤーがゲームに勝利します。

ナマケモノの移動を助ける動物の個々の能力がそれぞれ非常にユニーク(移動可能な地形や各種能力が細かく規定されています)で、その一長一短を理解し、また盤面の情報を整理することで、2手3手先の展開を思い描き、そのプランニングに沿ったカードドローが求められるところが本作の一番の醍醐味かと。


ゲームの文法をしっかりと理解しているデザイナーが古典的メカニクスへ新しい一石を投じた快作で、ボードゲームの面白さ、楽しさがたっぷりと味わえました。

将来的な展望を計画する楽しさと、それを反故しかねない他プレイヤーの動向への怠ることの許されない注意が勝利には不可欠で、他人のカードドローをしっかりと意識しておくことでその今後の動きを予想することもまた要求されます。

あるいは他者の予想を出し抜いた動き、動物コマの利用でそのプレイヤーから動物を離れさせ、なるべく他のプレイヤーが狙っている動物を利用させないアクションを狙っていきたいところがあって、実際に上手く出し抜けたときの相手の落胆(断末魔!w)とこちらの快感は本作ならではのものかもしれません。

油断しているとあっさりと収束してしまうため中盤から終盤は思っているよりもずっと早い展開になりかねないので、このあたり注意していた方がいいかもしれませんね。また通過できない地形などついつい見落としてしまいがちなのでここは全員のダブルチェック、相互チェックで慎重にゲームを進めたいところです。

僕はフリーゼは作品毎に好き嫌いの差が大きいデザイナーなんですが、本作は国内未流通が残念な御大健在をアピールする好タイトルかと。8.0

これもまだまだプレイを重ねて研究してみたいタイトルですね。


以上この日は計7タイトルをプレイ。このあと恒例の反省会となりました。

というわけで、いつものラーメン屋さんです。3人だったのですが、2日連続のゲーム会だったせいで疲労もあったのか、私はお二人の話を聞くばかりだった気がします。ま、それもまた楽しかったわけですが。

というわけでこの日も無事終了。参加者の皆さん、お疲れさまでした。また来月のえちボも魅力的なボードゲームに出会いたいものです。

2020/10/20

UDA土曜会(2020/10/17)

 17日の土曜日は自宅ゲームスペース“UDA”でのゲーム会でした。

この日の越前市は予想最高気温17度(実際は16度までしか上昇しなかったようですが)の肌寒い一日で、朝から時折小雨がちらつく生憎の空模様。終日にわたりどんよりとした雲が空一面を覆いつくしていたことも最高気温が上がらなかった一因になっていたと思います。

開始時こそ長袖のシャツ一枚でしたが、日中気温が上がらなかったこともあり、午後からは上にパーカーを羽織り、足元のファンヒーターとエアコンの暖房も初稼働させました。

ゲーム会の開始前にセブンイレブンでホットの方のドリップコーヒーを買い求め、この日のゲーム会に臨みました。

定刻の9時ぴったりに4人が揃い、開始となりました。


カエサルは果たしてダイスを振ったか?賽は投げられた。4人。

このタイトルから開始。アラーズとアイゼンシュタインによる2009年作でアレアの中箱第5弾になります。

手番で8つのダイスを振り、5つのエリアのいずれかに配置します。より大きい値、ゾロ目、順目などエリアはそれぞれ配置できるダイスの組合せが異なっており、またラウンド終了時に獲得できるタイルの性質もそれぞれです。

どのタイルも魅力的なのですがラウンド毎に供給されるタイルの枚数は限られており、ラウンド終了時の熾烈な生き残り判定をクリアするためにも当然ながら的を絞ったダイスの配置が求められます。

また一部のタイルは相互補完的な性質を持っており、あるタイルを入手することで、のちのち手に入れるべきタイルがある程度特定できることからそのタイルをめぐるプレイヤー間の駆引きが生まれます。

一度配置したダイスは固定されることもあって、他プレイヤーの出方を伺いつつ確実にタイルが獲得できるようにダイスは使っていきたいのですが、じわじわと小出しでいくと、いずれかのプレイヤーがダイスを置ききることがラウンド終了のトリガーとなっているため温存していたダイスが全てトイレ行きとなってしまうためここぞというところではリスクも顧みず、出し惜しみせずにダイスを使っていく局面もあるあたりが秀逸で、進行はけして間延びしません。

またトイレに行ったダイスにも振り直しチップ獲得という救済措置があるあたりはありがたくも優しさを感じるデザインだなと。

うまく領土と貴族を無駄にしないバランスのよいタイルの収集がまずは求められるのですが、方針とマッチすることで大きな可能性のある元老院タイルも無視できない存在です。といってそちらにばかり集中すると低コストで取られてしまいかねないフォルトゥナチップもあって、何かに特化していればいいという単純さのないバランスの良さは感じました。

実プレイ60分前後ながらファミリーストラテジというのは憚られる、紛れもないゲーマーズゲームで、万人にはお勧めしませんが、ゲーマー向けの隠れた秀作という印象。8.0

そういえばこのコンビはパンドリアの二人でしたね。あちらも地味ながら光るところがある好タイトルでしたし、このコンビからはこれからも目が離せそうにありません。


やや早かったのですが当初の予定通り早めの昼食に行くことにし、午前中は1タイトルのみで〆めて昼食休憩に。

この日の昼食はこれ。おろしそば大盛りとソースカツ丼のセットです。昼食にしては早めの時間帯だったのですがフードコートは満員で四人掛けのテーブルには座れませんでした。コロナ下の自粛ムードは一体どこへ行ったのかという世の空気を感じました。

この後隣接しているスターバックスコーヒーでキャラメルマキアートのホットを買い求め、午後からのゲーム会となりました。


御大ワレスの名作リビルト成る。ブラス:ランカシャー。4人。

“産業革命期という激動の時代のイングランドで、実業家であるあなたはインフラや近代設備の建設を通して富と名声を求めます”

ワレスの重厚なタイトルが全体的な見直しとともに生まれ変わりました。新しく要素が付け加えられた通称“白ブラス”に対し、こちらはプレイアビリティの向上に主眼が向けられた通称“黒ブラス”です。

手番では1枚カードを使ってワンアクション、これを2回行います。アクションは5種類ありますが、カードの内容が影響するのは“建設”のみ。基本的な構造は実にシンプルです。

大切なのはカードに大別して“都市”と“産業”の2種類があり性質が異なること、また“接続”と“ネットワーク”という二つの概念があり、ここをしっかりと理解しておくことが本作を楽しむ上で必須となります。

フレーバー(たっぷり2ページ)や補足、バリアントなどが詰め込まれているにも関わらず、ルールブックは全12ページで、ここからも重量級ながらルールの総量は比較的少ないことが伺えます。また言語依存も全くありません。

しかしながら勝つためにプレイヤーが考えなければならないことは、質、量ともに本作ならではのものがあり、一戦を終えた後の(心地良い)疲労感と充実感もまた特有のものがあります。

ボードのそこここで、局地的にプレイヤー間のウィンウィンが発生するのも本作ならではで、この濃厚なインタラクションもまた本作の大きな魅力です。ウィンウィンとはいえ自分の利益と当該プレイヤーの利益を秤にかけることが大切なのは言わずもがなですが。

運輸、産業の両タイルの配置は早い者勝ちの陣取り要素で、そのラウンドで使ったポンドによって次のラウンドの手番順が決定されるというメカニクスと相俟って、駆引きやマネジメントの面白さは濃厚なものがあります。

個人ボードや人物タイル、仕切りタイルなどなどがプレイアビリティの向上に大きく貢献しており、また心配していたメインボードの視認性も問題ありませんでした。バーケンヘッド周りの変則的な接続のルールもそっくり省かれています。本作をプレイして、ウォーフロッグ版を(一生懸命原語ルールを精読しつつ)あれこれ試行錯誤しながらプレイしていた日々を懐かしく思い出したりもしました。あちらはあちらでアートワークも含めて捨てがたい魅力はあるので手放すことはないと思いますが。

本作でしか味わえない、つまり他のボードゲームでは代替不可能な魅力のあるワレスの代表作のひとつ。プレイヤーに求められるスキルの高さが唯一気になるところか。8.5


インスト込み4時間の熱戦を終えて夕方5時過ぎとなりここで参加者の一人が帰られ、別の一人が参加ということで一人入れ替わりという形となって4人でのゲーム会はもう少し続きました。冒頭でも書いたようにこの時点で足元のファンヒーターは既にオンの状態、暖房も入れていました。


もともとダイスゲームじゃない、というありがちな突っ込みはなしで。ブルゴーニュダイスゲーム。4人。

“ここは15世紀のロワール峡谷。領主として地元の発展を目指しましょう”

フェルトの代表作のひとつのダイスゲームバージョンで、作者としてクレジットされているのはフェルトとクリストフ・トゥーサン。

特定の誰か(ルールではこのゲームの持ち主)が5つのダイスを振ります。ダイスは砂時計がひとつと6色のカラーダイスがふたつ、通常の6面体がふたつで計5つ。この5つの出目の結果を全員が共有します。手番の概念はありません。

砂時計はゲームの進行を司り、10マス埋まるとラウンド終了で決算です。全部で3ラウンドあります。

残りの4つのダイスから色と数字でひとつのペアを作り、各自のシートに数字を書き込んでいきます。

領土には書き込める数字が決まっており、またマーク済みのマスに隣接しているマスに限定されるため領土は開始時の城を出発点にそこから次第に広がっていくイメージです。

特定の色を埋めることで色や数字を自由に変えられる修道士や労働者が入手でき、これらのタイミングを考慮した効果的な利用がプレイヤーには求められる辺りは本作の醍醐味。

可もなく不可もないロール&ライトという印象。僕は“ブルゴーニュ”のままならなさがあまり好きではなかったためあのタイトルには世評ほどの好印象はもっていないのですが、それと同じ印象を本作にも感じ、なるほどそこを継承しているのかな、と勝手に解釈した次第です(そういう意味では確かに本作は成功しているとも言えるのですが)。

では自分にとって納得できる“ままならなさ”とは何か?という問題が表出してくるわけですが、それはまた別のタイトルをプレイした際にでも考えてみたいと思います。6.5


列車は西を目指してひた走る。ライド・ザ・レイルズ。4人。

キャップストーンゲームズがウィンサムゲームズから販売権を獲得して流通が始まった、ハリー・ウーがデザイン、イアン・オトゥールがアートワークの鉄道ゲームでこの日は〆めました。

①株券の獲得→②線路の敷設→③乗客の輸送、という3段階の流れで各ラウンドが構成されます。①の処理のみ手番の逆順で行われ、全部で6ラウンドです。

毎ラウンド、手番順は所持金(事実上の勝利点ですが)によって調整されます。株券の購入は他プレイヤーの出方を見て決めたいところなので、なるべく先手番を取りたいことになり、勝利点の獲得において微妙な調整も出来るようであれば考えたくなります。

また駅から駅までを一路線と定義し、乗客の運搬においてその路線が使われることで、その路線の株券を持っているプレイヤーにドルが支給されます。つまり事実上の1勝利点となるわけです。

鉄道プラス株という確立されているいちジャンルを出来るだけコンパクトに、とはいえそのジャンル特有の戦略性を大きく犠牲にすることなく仕上げることに成功した佳作というのが一戦してみての率直な感想。

各ラウンドで獲得できる株券はなにせ1枚のみというのがなんといってもソリッドで、ゲーム終了時に各プレイヤーが等しく6株持っている(しかし当然ながらその内訳はそれぞれ)というのもまた痺れます。異論はあるかもしれませんが、この辺りの引き締められた完結具合に僕などはシャハトの往年の名作群を想起したりしました。

また登場する鉄道会社は開始時は2社のみで、ラウンド毎に1社づつ追加されていくというシステムもまた注目点のひとつ。各鉄道会社の線路となる機関車駒は限られており、どれかに特化してその会社にばかり注力し続けるわけにもいきません。また株券は機関車駒が兼ねており、株として購入されることで線路の本数が減ることにもプレイヤーは意識していなければならないでしょう。

実に潔いピュアユーロと僕は捉えます。運要素ゼロながら勝敗が個人のスキルは勿論あるのですが、他プレイヤーの動向にも大きく左右される(と僕には感じられた)辺りが評価の分かれ目になりそう。7.5


予定ではもう少し続けるつもりでしたが、“黒ブラス”での消耗がやや大きかったのと翌日も朝からゲーム会の予定だったので以上4タイトルでこの日は終了しました。

ひとりはここで帰宅しましたが残った3人で恒例となりつつある反省会も含めた夜のラーメンとなりました。時刻は午後9時半頃だったと思います。結局この時刻でも時折小雨がちらついていたように思います。

大盛りラーメンとチャーシューご飯小。ラーメンが美味しいのは勿論なんですがこのチャーシュー丼がまた美味しいんですよね。ボードゲームで頭を酷使した後の空腹状態にこのセット。もう定番の流れ😓。参加していただいた皆さんに感謝。ありがとうございました。


この後帰宅してから翌日の“えちボ”の準備を少々やってベッドに入りました。ゲーム会だと一日が本当にあっという間ですね😅。

2020/10/06

UDA土曜会(2020/10/03)

3日の土曜日は自宅のゲームプレイスペース“UDA”でのクローズドゲーム会でした。

この日の越前市は最高気温27度最低気温17度曇りの過ごしやすい一日で、エアコンは稼働させずに窓を開放して外気をたっぷりと取り入れつつ、この日のゲーム会は開始されました。

どんよりと分厚い雲が空一面を終日に渡って覆いつくしていましたが、幸い終了まで雨が降ることはありませんでした。

ゲーム会は定刻の午前9時を20分ばかり過ぎてからまずは3人で開始となりました。

熱戦が交わされた“UDA”テーブル周り近影。床にまで溢れていたボードゲームの一部を処分したことで随分とすっきりし、またかねてより放置したままだった絵もようやく壁に掛けることができました。

参加者のひとりから差し入れのベルジャンチョコレート。こんな物まで頂いてしまい恐縮するなど。ありがとうございました!


5枚のゴミより宝の1枚。翡翠の商人。3人。

この日は国産競りゲームの傑作から開始。ゲームデザインが西村裕、アートワークが長谷川登鯉。

場の8枚のカードが競りにかけられます。開始プレイヤーから欲しい枚数をビッドしていきます。競りは一種のダッチオークションで、オーバービッドするには枚数で下回る必要があります。

1枚取って1枚返すことも可能で、この場合値付けは“0.5”になります。つまり2.5と宣言すれば3枚取って1枚返すわけです。

カードには種類毎に絶対評価、マジョリティ、セットコレクションなど様々な得点計算方法があり、欲しいカードを獲得するには各プレイヤーの状況も考慮した、絶妙な値付けが要求されます。

3人中唯一の経験者ながら、針の穴を通すようなきわどい値付けの連続で、また足元を見られるシビアな展開に思うように狙ったカードが集められず敗北。

1ゲーム30分もかからない短いゲーム時間ながら濃密な駆け引きが楽しめる世界レベルの傑作ですね。たしかに途中から方針転換するのが難しく、そこが本作に対するマイナスイメージになっている人もいるのは分かりますが。

僕が理想としているゲームにかなり近く評価は9.0。これからも時折かつ末永くプレイを重ねていく予感がある、僕の人生のスタンダード。

なおこちらで興味深いデザイナーズノートも読めます。内容はまずまずハードです。


クラシック、堂々の凱旋。ケイラス1303。4人。

“西暦1303年、イングランドとの戦争は終わったもののギュイエンヌ地方は彼らの手に落ちた。この脅威に対抗するため国境付近、ケイラスの地では城の強化、近代化のために多くの人が動き始めていた…”

ワーカープレイスメントの始祖とされる名作が前作と同じくアッティアの手により生まれ変わりました。

シンプルなワーカー配置とリソースマネジメント、一切の運要素がない非常に競技性の高いタイトルで、勝敗はプレイヤーの采配に大きく委ねられる本格派。

プレイヤーによって建てられた建物が一種のアクションマスとなり、そこにワーカーを配置することで手番プレイヤーはアクションを実行、所有者にも副次的にメリットがもたらされます。

建物の間を移動する“監督官”も重要な要素で、この監督官の移動次第で発動する建物が決定されることからこの移動をめぐる駆引きも必然的に熱くなります。


前作ケイラスとの最大の違いが“人物”の存在で、この人物の所有者には一種の特殊効果が与えられます。人物はプレイヤーのアクション次第で引き抜くことも可能で、これが前作にはなかった直接的なインタラクションをもたらしています。

この人物の特殊効果やインタラクションが本作の最大の焦点のひとつで、ここがノイズになるプレイヤーも勿論いるかもしれませんが、効果がそこまで強くないという印象もあって、これは僕には正常進化のひとつとして十分ありだなと思えました。

面白いと思ったのは2005年発表の前作にはなかったこの直接的そしてやや攻撃的ともいえるインタラクションが、ソロ寄りの薄いインタラクションが昨今の重量級ストラテジでの流行りとさえいえるこの時代に採用されている点で、今ならむしろ前作の、競争のインタラクションこそが採用されるようなものなのに、ケイラスはむしろその逆を行ってるように思えたことです。そこが逆説的に早すぎるこのシリーズの特徴をある意味如実に語っているというと些か強引かもしれませんが。

シビアなワカプレ特有のアクション先取りのプレッシャーがたっぷりと味わえる、のちの諸作の嚆矢となったエポックメイキングタイトルの正当後継で、評価は8.5

今回のセッションでは登場した建物のせいもあってか、後半にかけて手元の労働者駒が余りがちになってしまったため展開がやや弛緩気味になった気もしたのですが、この辺りはもっと場数を踏まないことには結論は出せない気はします。

ブレインスポーツとでも言いたくなるような、痺れんばかりの頭脳戦に夢中になった3時間でした。


午前中2タイトルを終えたこの時点で13時をやや回っていたのでここで昼食休憩となりました。参加者4人が私の軽自動車に乗り込み、市中心部の中華料理屋まで繰り出し、お昼を摂りました。

私のボルガ天津丼、1050円也。地元越前市ならではのメニューですね。もちろん美味しくいただきました。

このあと午後からのセッションに備えてスターバックスコーヒーにも立ち寄ろうとしたのですが隣接する中央公園で何かイベントをやっていたせいもあったのか、ドライブスルーは長蛇の列で、残念ながら諦めざるをえませんでした。


あちらを立てればこちらは立たずで悶絶するプレイヤーたち。フォルム・トラヤヌム。4人。

“ローマは今まさに繁栄の絶頂期を迎えていた。皇帝トラヤヌスは後世に残る偉大なる記念碑“フォルム・トラヤヌム”の建設にすでに着手していた。またその一方各地の“コロニア”でも有能な統治者により独自の発展が始まっていたのだった…”

午後はこのタイトルから。ステファン・フェルトの2018年作。

プレイヤーは3サイクル全12ラウンドに渡ってゲームをプレイします。

各ラウンドは大きく2フェイズに分かれます。まず前半のフェイズで労働者や建築士といったリソースを獲得、後半のフェイズでそのリソースを使って建物を建てたり、中央に使者を派遣したりします。

共有する中央のメインボードとそれぞれの個人ボードというお馴染みの構成で、個人ボードのコロニア上ではパズルチックに地盤を固め、中央のメインボードであるローマに派遣した使者で陣取りを行います。

各種要素が複雑に絡み合い、何かを優先しようとすると何かを犠牲にしなければならないジレンマの連続で、プレイヤーたちはこの苦しい局面を少しでも打開しようと糸口を求めて頭をフル回転させることが終始求められる、非常にスキルフルなタイトルです。

まずはリソースを獲得、そしてリソースを使ってプランを現実化という2段階の構造自体はシンプルなものなのですが、「しまった、ああすればよかった、どうして気付かなかったんだろう!」といった軽い後悔を多くのプレイヤーがひとつのセッションの間に何度も経験することになるでしょう。そしてその思いが「次はもっと上手くやれるはず!」という喚起を促しリプレイ欲求につながるように思います。

乱数要素が皆無で、ゲーム開始時にセットされた山札とタイルのオープンによって次第に未来が確定されていく期待値ゼロサム型(という言葉は今自分が勝手に作ったものですが😓。なんとなく言いたいことが分かってもらえればと🙇)で、戦略的な歯応えは十分のタイトルです。

ただ処理に煩雑な箇所が少なくなくインストのハードルがやや高いのと、プレイヤーに要求されるスキルも低くはないのでそこが評価の焦点になってきそうです。その求められるハードルの高さが残念ながらスキル不足の自分にはやや高すぎた気もしました。ゲームは十分以上に面白いですし、そこが本作の欠点でないことは勿論ですが。7.5

初回プレイはルールラーニングと割り切り、見えてきた選択を今後のプレイで試していきたいタイトルかもしれません。

気になったのは手番は時計回りながらドラフトは右隣り固定、スタートプレイヤーの移動も右隣り固定なところで、ここを間違いやすいかなと。これはどういう効果を狙ったものなのかも興味深い部分です。


早速のリプレイ。ニューヨークズー。4人。

好感触だったローゼンベルクのポリオミノ系新作を一週間前とは全く別の面子に試してもらいたい思いもあり立卓。

前回は5人でしたが今回は4人で、全体の情報量は当然こちらの方が少なく他人の盤面も把握しやすくなります。

情報量が少なくなったことで他人の状況も考慮した中央ボードでの駆引きが発生しやすくなるわけですが、他人の状況まで注意を払う余裕はなかなかなくて、手番開始時に考えられる選択肢から自分に最適な一手を考えることで各人がほぼほぼ精一杯というのがこの日のセッションでした。

となるとインタラクションはアトラクションタイルの早取りなどの競争がメインとなるわけで、どうしても多人数ソロパズル風にはなってしまうかもしれませんね。

ゲームに習熟してくれば他人に渡せないタイルが見えてくるはずで、となると中央のロンデル上での駆引きも予想されますが、そこでのインタラクションが負の方向(他人にとってプラスなものをなんとか阻止したい!)のもので終わってしまわないか、そこが今の僕がやや気になっているところです。(実際にこの日のセッションでその萌芽のようなものが見え隠れしていたように思います。)

タイルを埋めることによるボーナスのアトラクションタイルよりも方々のタイルに動物をばらまいて繁殖に力をいれるプレイを今回は試みました。終盤になってようやく次々とタイルが埋まり始め、完成にむけて一気に加速しましたが一歩及ばず敗北。

方針が各プレイヤーによりバラバラで途中までの進捗に差は出ますが、最終盤では勝利がどちらに転んでもおかしくないギリギリの展開になることが多く、この辺りにローゼンベルクのバランス調整を見る気がするのですがどうでしょう。8.0


災害にビクビクしつつ3ラウンド。ラー・ダイスゲーム。4人。

最後はこれで〆ました。クニツィアによるラーのダイスバージョンです。

6面体ダイスが5つ。手番にこれをロールして太陽面はフィックスしますが残りは2回まで振り直しできます。アンク面は他の出目に染まるので、どの目として利用するか、そこも考えどころ。

最終的に決定した目に応じて4種のパラメータ操作を行います。

全3ラウンドで、それぞれの終了時に決算します。モニュメントの決算のみゲーム終了時なのはオリジナルのラーと一緒ですね。

あの手持ちのタイルを使った独特の競りやプレイヤーによって異なってくる対象物の価値とそれを考慮した駆引きが僕にとってのラーだったので、正直ラーらしさはほとんど残っていないというのが僕の印象ですが、名作のダウンサイジングとして、または単独作としてみればまずまずの出来で、久しぶりにプレイしましたがやはり放出するには惜しい、今後も不定期にプレイを重ねたいと思わせるのに十分な侮れない妙味は感じることができました。6.5

太陽面が4個以上になると災害が発生し、これは手番プレイヤー以外に甚大な被害を及ぼすため体勢を整えつつあるプレイヤーには脅威以外の何物でもなく、ビクビクと経過を見守っていましたが、終了間際でついに発生してしまい、セッションは盛り上がりました。リロールの回数にもよると思うのですが、1ゲームで1回発生するかどうか微妙なラインなのも絶妙なのかもしれません。


ここで午後9時を回ったあたりで、この後も残った二人でもう少し二人用のタイトルをいくつかプレイする予定でいたのですが、翌朝7時から別の予定が入っていたこともあり、体調のことも鑑み今回はここで終了としました。

ゲーム会は無事終了したもののあまりの空腹に耐えられそうもなかったので、この後残った二人でいつものラーメン屋へ繰り出しました。

新しく始まったメニューらしい濃厚ラーメン特盛り。実は食券購入時に誤ってしまい、今回はこれに。ですが天一のような濃厚さで、これはこれで美味しかったです。

2020/09/29

えちボ(越前市ボードゲームの会) 9月ゲーム会(2020/09/27)

27日の日曜日は地元越前市でのオープンゲーム会“えちボ”に参加してきました。

前日の26日土曜日も休日だったのですが、この日は前日の金曜日から断続的に降り続ける雨が朝から続いており、日中何度か警報さえ発表されていたように時折地面を叩きつけるように激しく降ることもあって、翌日のゲーム会当日の天気がどうなるのか心配していたのですが、当日の日曜日は朝から青空が広がる素晴らしく気持ちの良い秋晴れとなり、ゲームの持ち込みにも心配は必要ありませんでした(まあもっとも会場の“市民プラザたけふ”には4階建ての駐車場が併設されているので、持ち込みたいボードゲームが雨に濡れる心配はまずほとんどないのですが…)。

当日の朝は早めに準備して余裕をもって家を出、会場までの道中にあるファミリーマート店内のイートインスペースで軽く朝食を摂りつつ、午前9時開始予定のゲーム会ながら8時45分頃には会場入りして着々と設営に勤しんでいました。

なお同会場はJR武生駅にも隣接しており、遠方からJR線を利用した参加にも十分対応できる立地条件であることはひとこと付言しておきたいと思います。こちらでの参加も是非ご検討下さい。


葉隠とは死ぬことと見つけたり。葉隠、4人。

この日のスタートはこれ。数寄ゲームズから国内供給の始まったばかりの新作トリックテイキング。

特徴的なのは低ランクの青(村人)と高ランクの赤(侍)という2スート構成で、リードプレイヤーが赤をプレイした場合のみフォローの義務が発生するところ。

また5枚の特殊トークン“幟”を使うことで、そのラウンドのみ得点が倍になったり、中央の場札と手札を交換したりできます。

1ラウンドが4トリックで構成され全8ラウンド。獲得した1トリックが単純に1点、逆にゼロトリックなら減点でマイナス2点のペナルティがあることからとにかくトリックの獲得を目指したいゲームで、ディール次第の運要素は若干否めないものがあり(そこを補助してくれるのが“幟”なんですが)、それほど競技性は高くない部類か。

もっともその運要素に対抗する幟トークンの使い時のジレンマや手札を選ぶ際にプレイヤーの判断スキルを問われる瞬間もあって、そのあたりがどれくらいプレイヤーに訴求するかで評価は分かれそう。

例えば「今回の手札、どうにも弱いなあ。できれば幟使いたいけれど、この先のラウンドは大丈夫だろうか?」みたいにプレイヤーに判断を迫られるあたりは本作の醍醐味のひとつかと。

とはいえ僕の好みのトリテはもっとガチ寄り、変則よりなので、ゆらゆらと展開が掴みづらい本作に若干の戸惑いは否めず評価は5.5

オールユニークと思われるカードのアートワークは素晴らしいですね。(人物のアートワークを活かすための縦長のカードなんだろうか。)


ドラゴンの恐怖から、突然、脱兎のごとく。ノギ・ザ・パス、5人。

“ドラゴン討伐のために召集された勇者たち。だがあまりの強さに彼らは我先にと逃亡したのだった…”

クニツィア“アバンダン・シップ”のポーランドパブリッシャーリメイクです。

各プレイヤーは秘匿情報として3匹のウサギを担当します。手番ではいずれかのダイスを使っていずれかのウサギを操作します。この操作により対応するコマが基本的には前進するのですが、場合によっては後退もします。

ダイスには何度も利用できる出目と使い切りの出目があり、手番開始時に使い切りのダイスがすべて使われていたら新たに全てのダイスを振り直してアクションを続行していきます。

ゴールはお姫様の待つお城なんですが最も早く着いてしまうと臆病者のレッテルを貼られて0点、2位以下がそれぞれ5、3、2点と得点できます。

絵に描いたようなクニツィア節で、まあこういうファミリーゲームを作らせるたら右に出るデザイナーはいませんね。

ゲームは十分面白かったんですが、ダイスの選択における動機付けが弱いというか、選択自体の重みにやや欠ける印象は拭えず、そこが惜しい気も。6.0

巨大なドラゴン駒や一目散に逃げかえってるシルエットの再現が素晴らしいウサギ駒、そして牧歌的なボードのアートワークはポーランドパブリッシャー発のクオリティの高さを感じずにはいられません。


荒波を掻き分けて、すすめ、海賊さん。ワイルドパイレーツ、5人。

1989年初出のトリックテイキング&スゴロク。

マストフォロー、マストラフで獲得したトリックの数だけ船を進めます。

マスにはアクションが指示されたものもあり、そこに止まったら各アクションの処理になるのでプレイヤー毎に狙っていきたいトリック数が異なるのが本作のミソ&醍醐味。

また後からやってきた船に踏まれてしまうと一つ前の錨マスまで戻されます。

デザイナーの意図は読み取れますし、そこは間違いなく楽しめたんですが、現代の洗練されたユーロゲームにたっぷりと舌が肥えてしまった我々が素直に楽しむには些か厳しかったのも事実で、ただそれは本作の瑕疵などでは全くなく、ちょっとしたもどかしさの残る残念な一作だったかもしれません。

気になったのは収束性と負のインタラクション。やはり古いタイトルならではの冗長性は否めず、残念ながら協議終了。“プレイしていて楽しいのでこのまま終わらなければいい”というわけにもいかないわけで、ここからは僕の勝手な自論なんですが、セッションにおいて“早く終わらせたいな”と思えてしまったらそれはそのゲームの最大の瑕疵で、デザインの敗北だと思っています。逆にゲームが終了した時に“ああもっとプレイしたい”と思わせることができればこれは完全にデザイナーの(プレイヤーに対する)勝利なんだとも。

欧米のデザイナーがそんな事を考えていたかどうかは分かりませんが、この30年、収束性について日々進歩を遂げていったことは間違いのない事実で、如何に短い時間内でプレイヤーに高い満足感を与えられるか、そこに神経を割いたゲームデザインが多くのタイトルで試みられてきたはずです。

と同時に31年も前のゲームなのに本質的な本作ならではの妙味は揺るがないものもあって(プレイできたこと自体に対する満足感もあり)感心するなど。うまく現代的にアレンジできればいまでも全然通用する気はしました。6.5


ここで午前の部を終了。昼食休憩となりました。この時点で12名3卓という状況でした。昼食は近場の飲食店に足を運ぶ人もいれば階下のアルプラザでお弁当やら総菜やらを買ってきて会場で食べる人もいましたが、私は後者を選択。売り場に備え付けの電子レンジで温めたのち3階の会場で参加者と談笑しつつ昼食を楽しみました。


ここは遥かなるアイルランド、吹き抜けていく爽やかな風。セルティック。4人。

“ケルトの王グロウベルグに死が近づいています。4つの部族による後継者争いが始まりました。近隣の地域を切り開いたり、外部との交易で最も影響力を高めた部族がケルト民族の皇子となります”

先日よりゲームストアバネストから国内供給の始まった今年の新作。ピック&デリバリの一種といっていいのかどうか分かりませんがおつかい系。

2つあるいは3つの地点に民族を派遣するか、外縁部で商取引を行ってカードを手に入れるかして得点化します。

特徴的なのは手番プレイヤーが移動する際他人も同行できるところで、始点終点の両方が同じであることに制限されますが、これによって効率的に移動できるのは勝利のためには欠かせない重要な要素でしょう。

したがって他人とはなるべく離れないようにしつつ、そのマスを同じくする駒は自分からはなるべく移動アクションを発動させないことが基本的な戦略になるようにも思われました。

もうひとつ特徴的だったのが最終決算の計算方法で、達成した目的地カードの数で制限がかかる中、同種を多数集めてもそれほど高い点数は望めない仕組みはまずまず良くできているかと。

ただ目的地特化型がどうにも強いように思われ、得点計算のバランスには疑問が残ったのと、チケットトゥライドなどと同様に目的地カードの“引き運”はこの手のゲームでは避けては通れない問題ですね。

盤面全体に駒を広げ、目的地カードの“待ち”を広くしたつもりでしたが目的地達成速攻型に終了トリガーを引かれてあえなく敗北。6.0

ケルトの文化がふんだんに反映されたメインボードとボックスのアートワークは美麗そのもの。本日のアートワーク大賞。


餌を狙う鳥と鳥を狙うキツネ、6人ベスト説。にわとりの餌場。6人。

ステファン・ドラの2001年のバッティングゲームです。

6つの“餌場”に毎ラウンドひとつづつキューブ(1~3点)が配置されます。

プレイヤーは手札から裏向きに1枚をプロットします。カードには大きく分けて得点源であるキューブを獲得するための“鳥”(細かい話ですが鳥は各餌場毎ににわとりやアヒルなど全6種類があります。もちろんフレーバーでしかありませんが。)とその餌場に対してプレイされた“鳥”を手札にできる“キツネ”の2種類があります。また全てのカードは各餌場のいずれかに対応しており、強さを示す数値も付されています。

その餌場に鳥1羽でバッティングしなければ全てのキューブが手に入りますが、他にも鳥がいればまずは自由交渉、それでも解決しなければダイスロールで単独勝利者を決定します。

キツネは単独だと空振りで何も起こりませんが、鳥がいればその鳥カードを手札として入手できるチャンスです。キツネも他のキツネとバッティングすればダイスロールでの勝負(交渉は最初からなし)になります。

獲得されなかったキューブは餌場に残るので、場合によってはどんどんキューブが膨れ上がる餌場も出てきてゲームは否が応でも盛り上がるようにデザインされており、この辺りはさすがはドラ、抜かりなしといったところでしょうか。

交渉が嫌いな僕ですが、この程度であれば問題ないですし、特にネガティブな部分が見当たらないお手本のようなバッティングピュアユーロで、名作として長くプレイされつづけるポテンシャルは十分かと。8.0

あえて気になった点を挙げるなら、“セッションによってゲームの面白さの凹凸が出やすい”かもしれないと思われたところでしょうか。盛り上がるセッションもあれば全くそうならないこともあるかな、という。

あと残った手札がそのまま点数になるので6のカードは温存し、キツネをとにかく使っていくという戦法が強いのかどうかはちょっと検証してみたいところです。(とはいえこの時のセッションではうまく大量のキューブを集めたプレイヤーの勝利に終わりましたが。)

アートワークは一目見てこの人とわかるであろうドリス・マテウスですね。


溢れんばかりの大量の木製動物コマの愉悦。ニューヨークズー。5人。

“自然動物園を設計します。最初に完成できるのは誰でしょう”

テンデイズゲームズから国内版の流通が始まったばかりのウヴェ・ローゼンベルクによる新作です。

中央のボード上にてプレイヤーは1個の象コマを共有します。手番ではこの象を時計まわりに進め、止まったマスに応じたアクションを行います。

アクションは囲い地タイルの獲得&配置か動物コマの獲得&配置の2つで、最初に自分のボードをタイルで埋めきったプレイヤーがゲームに勝利します。

象コマを移動した際、繁殖ラインを横切っていたら手番プレイヤーのメインアクションの後で、該当プレイヤー全員による“繁殖”が起こり、つがいの動物たちに子供が生まれます。

囲い地タイルはポリオミノで本作にはテトロミノ(4マス)、ペントミノ(5マス)、ヘキソミノ(6マス)、ヘプトミノ(7マス)の四種類が登場します。

期待の新作でこちらのハードルも上がっていたのですが裏切られませんでした。大きいタイルを配置できれば当然広い範囲をカバーできますが、小さいタイルには動物で埋めやすいというメリットもあったりと細かいルールやひとつひとつの要素がうまく嚙み合っていてゲームの完成度に貢献しているという印象で、ポリオミノに拘り続けてきたローゼンベルクのひとつの到達点といっても過言ではない気がしました。

なによりも勝利条件である“すべての空白地をタイルで埋める”という目的に心の底から熱中できたのが楽しかったですね。ゲームの本来あるべき姿はやはり勝利条件の達成に夢中になれることなんじゃないかとこのセッションで感じました。

気になった点は直感的ではない細かいルールが少々含まれているところでしょうか。とはいえ明確化はされているので、ここはインストの時にしっかり落とし込んで乗り越えていきたい部分です。8.5

しかしポリオミノはローゼンベルクのライフワークになってきた感さえあります(笑)。僕にはここでひとつ区切りができたように思えるのですが、この後もまだ発表されても不思議ではないですね。


メディチから競りを省いても果たしてメディチか問題。メディチ・ザ・ダイスゲーム。4人。

名作メディチのダイスゲーム版です。クニツィアの2020年新作。

手番では5D6してそのうち最大3つのダイスを選択。選んだダイスの数字と商品をシートにマークします。

手番外のプレイヤーは手番プレイヤーに選ばれなかったダイスの中からひとつを選択し、同様にマークしていきます。

3ラウンド制で3回ある決算は相対評価で、各要素で2位までにのみ点数が入る仕組み。

あの名作競りゲームから大胆に競りをばっさりと排除しロール&ライトとして新作が出来上がったという印象で、タイトルからどうしてもメディチと比較したくなりますが、純粋な単独新作として水準以上の出来ではないかと。

ボーナスで絶対評価として10あるいは20点が入るところや点数計算が逐一相対評価のあたりに名作の微かな残り香を感じたりも。

気になったのは全員が同時にシートに書き込むのか、ガチに時計回りで書き込んでいくのか、どちらを選択しますか問題(この時は前者を採用)。面倒ですが個人的には衝立を準備して全員同時がいいように思いました。各自がシートをテーブル中央に寄せてこの衝立ありのやり方も試してみたいかもしれません。

若干の6出ろシステム臭を感じましたが十分楽しめました。7.0


この時点で夕方6時ころ。参加者は19名で4卓が立っていました。この頃合いで退出される参加者も多いので一旦リセットして約30分の休憩タイムとなりました。自分も最後のセッションに向けて甘味と飲み物を補給しました。


やっぱり人生にはティータイムが必要だ。アルバリ。4人。

“レッサーヒマラヤの過酷な環境の中、瓦礫の山を切り崩して開拓し、紅茶畑で茶葉の栽培、収穫を行います。収入を元手にダージリンの町に向けて伸びていくヒマラヤ鉄道の建設に貢献しましょう”

本作でこの日は〆ました。スノードニアの流れを汲むトニー・ボイデルのワーカープレイスメントです。

プレイヤーはリソースの獲得や駅、鉄道の建設、紅茶畑の開拓などを通して勝利点を積み重ねていきます。

特徴的なのは“天候”の存在。天候には晴れ、雨、霧の3種類があり、そのラウンドの天候により一部のパラメータが調整されます。アクションの中にはこれらのパラメータに基づいて効率が左右されるものもあります。天候は翌日と翌々日まで情報として開示されているので、ここに注意を払ったプレイングが重要で、またそれが本作の大きな醍醐味ともなっています。この天候のメカニクスは前作のスノードニアにもあった印象的で記憶に残るメカニクスで、作者のボイデルもここは外せなかったのかもしれません。

やりたいことはたくさんあるのに、ワーカーはたったふたつというのがまずは厳しいところ。実はチャイという貴重な(そして随所で役に立つ!)リソースをふるまうことでティーハウスで休憩中の3人目のワーカーを引っ張ってこれるのですが、そのためには“設備”が必要で、で設備のためには○○が必要で(以下同様に続く)、という連鎖が続き、序盤からひたすらコツコツと足場を築き上げる忍耐が必要な地味で質実剛健なタイトルで、ただ実はここでの効率的なプレイが、見た目にはほとんど差はないのですが、後半に向けて一歩抜きんでるための大切な時間のゲームなのかもしれません。

ひたすら地歩を固めるプレイが続くように感じるからか、ゲームは些か冗長なものに思えるかもしれませんが、この時のセッションがそうだったように、収束は急速に訪れます。集めたリソース等々を勝利点に変換していくフェイズに突入するとゲームは一気に終わりに近づく印象で、プレイヤーがまだ中盤くらいだと高を括っている段階で実は終盤に差し掛かっていると思っていてもいいかもしれません。実際この時もインストを除いた実プレイは約2時間で、これはプレイ中には想定しえなかった時間でした。

それも踏まえて、このゲームのメインは、形を作るまでの地味な時間帯なのかもしれず、好き嫌いもそこで分かれるかもしれません。

僕はこのセッションのためにサマリを作成していたのですが、やや分かりにくい点も少なくない本作ですし、インストを補助してくれる面もあり、このサマリは実に役に立ちました。

この日はセッションを通してルールに若干の不明点が見つかりましたが、シンプルと言っても良い基本的にはオーソドックスで骨太なワーカープレイスメントです。他人より効率的にアクションを積み重ね、盤面に注意を払って適切な判断を重ねることができたプレイヤーは最後に勝利するでしょう。

カードテキストが嫌いな僕にはそこが気になりましたがこればっかりは、ですね。7.0


以上バラエティに富んだ新旧合計8タイトルを終日にわたってプレイし楽しむことができた充実の一日でした。この後会場の後片付けを残った参加者たちと行ってこの日は撤収、会場をあとにしました(そういえばこの日は盛大な忘れ物が2点ありまして。撤収時やや途方に暮れていたところ、この解散の時にタイミングよく当事者が戻ってきてくれたので事なきを得ましたが。いや自分も気をつけよう。とはいいつつ流石にそれは忘れないような気も、などなどw)。なお次回10月の“えちボ”は18日(日)の予定です。


そしていつものラーメン屋さんで恒例の反省会。大盛りラーメン、煮玉子、青菜トッピング。ゲームにどっぷりと集中したせいもあって、いつもこの時間帯はお腹ペコペコなので、体にはよくないと分かってはいても、この誘惑には勝てそうもありません。その分明日からまた頑張るということで!

2019/12/22

“サンスーシ”について

(※この記事はボードゲーム紹介Advent Calendarの22日目の記事として書きました。)

みなさん初めまして。北陸のピュアユーロ信者“サトウハヤト”と申します。短く“はと”と名乗っていたりもします。

毎年楽しく読ませていただく一方のこちらのアドベントカレンダーでしたが、今回初めて書き手のほうで参加させて頂きます。駄文にどうかしばらくお付き合いを。

昨日の記事は九州でボードゲームを楽しまれているKINUさんの個人的年間ベストの発表でした。ノミネートの5タイトルは私も納得のラインナップで読み応えがありましたね。(ところでヴァルシュの“深い谷の酒場”、正式な国内流通はないまま終わるのでしょうか。)





さて今回、私は“サンスーシ”というボードゲームについて紹介したいと思います。

“サンスーシ”はドイツ人のゲームデザイナー、ミヒャエル・キースリングが2013年にラベンスバーガー社から発表したタイトルです。

ミヒャエル・キースリングというと最近では“アズール”が大ヒットを記録したことでその名前をご存知の方も多いかもしれません。
他に“ヘブン&エール”や“リバーボート”などのデザインも手掛けており、ここ最近確実に知名度を上げていますが、本作は彼がまだそれほど有名ではなかった頃のタイトルで(あるいはクラマー&キースリングのネームバリューが強くて、あのクラマーの良き相棒としての認識が一般的だったかもしれませんね)、このゲームタイトルを初めて耳にするプレイヤーも少なくないかもしれませんね。

作品の舞台となった“サンスーシ宮殿”はドイツ北東部の都市ポツダムにあるサンスーシ公園にあるロココ式建築の宮殿です。1745年にフリードリヒ2世によって建てられ、1990年には世界遺産に登録されました。


因みに漢名は“無憂宮”(サンスーシがフランス語の“Sans Souci(憂いなし)”から来ているため)というそうです。


上空から見たサンスーシ宮殿。このように宮殿前が6段の美しい階層構造の庭園になっているのが特徴です。




ではゲーム本体を見ていきましょう。


ボックスです。アートワークはジュリアン・デルヴァル。馴染みのない名前かもしれませんが、チケットトゥライド(乗車券)などを手掛けたアーティストです。言われてみると“ああ、なるほど!”と納得される方もおられるかも。


ボックスの背面。


個人ボードです。9つの列(縦列)と6つの行(横列)からなる全54マスから全体の庭が構成されています。
列には“モチーフ”が、行には“色”が割り当てられています。行に書かれている1から6の数字は条件を満たした時に得られる得点を表しています。
54マスのうち15マスにはすでに庭タイルが描きこまれ、これはすでに庭タイルが配置済みであることを表しています。

この個人ボードは最大プレイヤー数と同じく4枚あり、それぞれに表裏があって全部ユニークなので開始時の庭は全部で8パターンあることになります。


中央に配置されるメインボードです。ちなみにコンポーネントのアートワークはデルヴァルに代わって(僕の大好きな)ハラルド・リースケが担当。


庭タイルです。このタイルを個人ボードのマスに配置していくことで各自が自分の庭園を作っていきます。


庭タイルの裏面。ローマ数字はプレイヤー人数により使用するタイルを選り分けるためのもの。例えば3人プレイならⅡとⅢを使うという具合。4人でプレイする場合もちろん全てのタイルを使います。

庭タイルは9種類のモチーフ毎に9枚あります。4人プレイの場合使うタイル枚数は全81枚となります。特にレアリティはありません。


この庭タイル、持ってみるとよく分かるんですが、しっかりとした厚みのあるもので、この分厚いタイルをパチパチと自分のボードに配置していくことになります。ユーロゲームに顕著な分厚いタイルは僕の好きなコンポーネントのひとつでもあります。


庭タイルをメインボードにセットし、ゲーム開始時のセットアップをしてみました。
手番では中央のカラーリングされた10個の枠内に配置されたタイルのいずれか1枚を選び、自分のボードに配置していきます。
周りには山札として適当にタイルが積まれています。


ゲーム開始時各プレイヤーに配られるカードです。全18枚。これらをシャッフルして各自の山札とした後、そこからドローして2枚を手札として持ちます。


カードの内訳。上から順に50点100点マーカー、自由選択、モチーフ9枚、色8枚で全18枚。

色カードをプレイすると2色いずれかの枠の中のタイルが選べます。つまりこのカードを使った場合常に4択ということになります。
モチーフカードをプレイするとそのモチーフが描かれたタイルのうちから1枚選ぶことになります。
自由選択はいわばジョーカーで、これを使った時のみ10枚の中から自由に1枚を選べます。貴重なカードなのでここぞという時にタイミングを見極めて使っていきたいカードです。


先程のメインボードをアップにしてみました。
階段のモチーフのカードを使うと場の2枚のいずれかが選択できます。噴水のカードであれば1枚しかないので選択肢はないことになりますね。
カードの使い方、タイルの選び方が分かって頂けると思います。


ゲーム開始時の個人ボード。このように上部に貴族9人を配置してゲームを開始します。

この光景、僕なんかは同じくキースリングが今年発表したばかりの新作“雅(Miyabi)”の灯篭コマを配置した時を想起してしまうのですがどうでしょう。同じタイル配置ですし、まあ少々強引ですが“雅(Miyabi)
”のルーツは本作にあるとかないとか、そういう仮説も可能かなと(まあ半ば冗談ですがw)。


プレイヤーは手番ではまずカードをプレイしてタイルを獲得し、それを配置します。

配置はそのタイルがあったメインボード上の枠の色とそのタイルのモチーフに合致したマスにのみ置けます。そのようなマスは1つしかないので配置場所における選択肢はありません。
またもしそのマスにすでにタイルが配置済みの場合、裏面の庭師の方を向けて対応する行か列のいずれかのマスに配置します。それも全て埋まっていた時に限り任意のマスに配置できます。


ゲームが始まって何枚か庭タイルが置かれた個人ボード。

カードをプレイし、タイルを配置したら、貴族を移動させます。この貴族の移動は任意で、毎手番必ず行うアクションではありません。

貴族はタイルに描かれた道に沿って、その列の、より下方(手前)に移動する必要があります。移動の途中で他の列に入ったり、上方に行くのは構いません。移動を終えた時に先程の条件を満たしていればいいわけです。


いちばん左の貴族を赤い線のように移動させてみました。これで4点獲得です。もうひとつ下のタイルまで移動すれば5点だったのですが、


次のラウンドでこのように移動すれば5点なので結果的にはこちらの方が高得点ということになります。このようにして得点を稼ぐのが本作のポイントのひとつなのです。

この後メインボードにタイルを補充し、手札を1枚補充したら手番は終了です。

こうように手番を重ねていき、全18枚全てのカードを使い切ったらゲームは終了です。(この“全てのカードを必ず使い切る”という点もまたポイントのひとつで、そのことを意識したマネジメントも本作の醍醐味のひとつですね。)

ゲームが終わると完成した行や列、そして話が前後してしまいましたがゲーム開始時に配られる2枚の指示カードにより得点できます。


こちらがその指示カード。
最初に配られる2枚の指示カードは最後まで自分だけが知り得る秘匿情報で、これらのカードが配られたあとで、最初の手番の前に、プレイヤーは個人ボードのどちらの面を使うのか選ぶこともできます。

因みに拡張も本体に同梱されています。


これがその拡張ボード。こちらも表裏2面あります。


拡張を取り入れる場合このように個人ボードにセットします。配置するマス、タイルに応じてボーナスやペナルティが発生します。


どうです?なかなか面白そうじゃないですか?シンプルで例外のない実にすっきりとしたピュアユーロであることが分って頂けたでしょうか。

残念ながら既に絶版で国内流通も終了していますが、中古であれば比較的安価で入手もしやすいと思われます。この記事を読んで少しでも興味を持って頂けたのであれば、一度はプレイする価値は十分にあると思います。





さて最後に蛇足といいますか、僕の本作に対する印象を少々。

このようにルール自体は簡単で分かりやすいファミリーゲームですが、パズルチックでインタラクションは希薄、また手なりでのプレイに終始しやすい傾向など僕自身の好みのコアな部分とはやや外れるというのが実は正直なところです。

ただそれは個人の好みの問題であり、端正で素直な完成度の高いピュアユーロ特有の輝きは発表から6年を経ても陰ることはなく、もし本作が話題にならないという理由でボードゲーム愛好者の記憶から消えていってしまうのはなんだか惜しい気がした事もあり今回このように紹介してみました。

実際本作は発表の翌年にSdJのリコメンドを獲得しており、それは本国ドイツでの評価の高さを窺わせます。
またあの(ピュアユーロには些か厳しい)BGGでレート7.1(2019年現在)というのも意外だったりします。

(それらを勿論否定するわけではありませんが)ここには派手な特殊効果やコンボも濃厚で魅力的なフレーバーもガチガチの競技性もヒリヒリするようなマゾヒズムもありません。ここにあるのはピュアユーロ特有の淡泊な味(そしてそれのみ)です。濃厚で高級なグルメ料理に食べ飽きてしまったなら、時にはこんな一汁一菜は如何でしょうか。

(この流れでピュアユーロの定義や魅力についても色々と考察してみたくなりましたが、話が長くなりそうなのでそちらはまた別の機会にでも…。)

明日はご自身がゲームデザインもされているあかしあさんの記事です。こちらも楽しみですね。では!