2013/12/23

UDA土曜ゲーム会 “第二回エッセン新作会”('13/12/21)

先月のUDA土曜会に引き続き、今月のUDA会もシュピール13にて発表されたエッセンの新作中心のゲーム会でした。

プレイした感想、雑感などをこちらにて報告しておきます。


この日は当ブログでも開封記事を掲載した巨大ボックス入りのステファン・フェルト、キックスターター発の新作“アメリゴ”から。

大航海時代を背景に、大小入り乱れる諸島群からなる海域へと乗り込み、新天地を開拓していく正統派ユーロ。

ディルク・ヘンの“ヴァレンシュタイン”や“将軍”でお馴染みの巨大なキューブタワーがフェルトにより再登場となりました。

各ラウンドのフェイズ毎にこの巨大なタワーにキューブを放り込み、その結果でアクションポイントと選択できるアクションの二つが決定されるメカニクスで、なるほどこれは上手いアイデアだな、と。

アクションは計7つで、こちらも航海や建設、手番順への作用などシンプルにして十分なものが用意されており、分かりやすく、プレイアビリティは良好。

島の開拓をめぐる陣取り争いやリソース収集におけるセットコレクション、毎ラウンドの海賊の襲撃への備え(フェルトらしいマゾヒスティック要素)、完全アイコン表記非テキスト依存の特殊タイル、手番順決定に対するプレイヤーの意志介入などドイツゲームならではの快楽とフェルトらしいデザインの妙がトゥーマッチにならず、適度なボリュームで見事に融合しており、運要素やインタラクションなどいろんな意味でバランスが絶妙な優秀作で好感が持てました。

今年発表されたフェルトの4タイトル(ボラボラ、リアルト、ブルッヘ、アメリゴ)はこれですべてプレイしたことになりますが、一長一短のあった先の3作に比べ、特に不満点の見当たらない本作は(僕にとって)やや評価を落とす傾向にあったフェルトの見事な失地回復ともいえるもので、評価は間違いなくPositive

箱が大きすぎることからゲーム会への持ち込みにおける負担が懸念されますが、自分にしては珍しく、早くも拡張(現在3種発表されている模様)への期待さえ芽生えているという有様です。

じつはあまり期待していなかっただけにこれは思わぬ拾い物でした。(こんな事ならバックしておけばよかった…w)

つづいてクワインド・ゲームズからの“アメリカン・レイルズ”。

鉄道に株式要素付与というシステムの割には比較的シンプルで収束性も高い鉄道ゲーム。

アクション選択のメカニクスが、手番順の選択も兼ねており、またアイコンで見た目も分かりやすく、アクション自体も簡潔なものであるためプレイアビリティは実に良好。

各都市に設けられた独占時収益と共有時収益というアイデアが秀逸で、株価の変動への操作介入もシンプルに用意されており、株式経済ゲームならではのプレイ感も味わえます。

ただ思うに本作の肝は株券の入札における競りであり、ここでの成功の可否がゲーム終了時の各プレイヤーの現金資産にダイレクトに影響してくるわけで、勝敗のカギがここであることを考えると、メインのメカニクスからいえば本作は競りゲームなのではないかという印象がこの時のセッションでは強く感じられました。

地味渋ないぶし銀、50を超えた老練な職人のような佇まいという印象の本作で、もちろん悪くはないのですが、もう少し株式操作や会社運営への操作介入の要素が強いとさらに良かったか(まあでもそれは贅沢な気もしますが)。で評価はPositive-

しかしくどいようですがこの収束性とプレイアビリティの高さは貴重。シカゴエクスプレスやサマルカンドをより硬派よりに再調整したともとれるかも。

ベルギーの孤高のゲームメーカー、パールゲームズからのエッセン最新作“ブリュッセル1893”。

アールヌーボーというボードゲームには珍しいテーマを大胆に取り込んだ、ゲーマー向けのワーカー配置がメインメカニクス。

特徴的なのはマジョリティや競り、リソースマネジメント、果ては“ケイラス”のような副次効果などなど豊富な要素の数々が、プレイヤーのワンアクションによって決定される点で、プレイヤーは限定された選択肢の中で、あれやこれやといった多方面への影響を念頭においた一手を打つことを強いられます。

これだけの要素をひとつのアクションに集約させるこのデザインには“変態的WP”という言葉さえセッション中には想起しましたが、全く破綻のない高い完成度は精工につくられた正確に時を刻む高級時計をも思わせるものがあり、これこそが時代の最先端を走る最新型のボードゲームなのかもしれません。

勝敗について細かい計算をなしえるのはエキスパートにのみ許された領域で(それに各人各様の意志決定および判断が少なくないインタラクションの本作で作用しないはずもありませんしね。言い換えればすべてのプレイヤーの手の打ち方など予想できようはずもなく、論理的に将来を見通すのはまず不可能です)、そういう意味での見通しの悪さ、ハードルの高さは否めませんが、豊富に用意されている勝利への道程のなかで、己の感覚のみを信じて最善と思える決断を下し続けるのは間違いなくテーブルゲームの最大の醍醐味。

間口の狭さは否めませんが、よくぞここまで纏め上げたものですね、パールゲームズは。ということで評価はPositive。やっぱりパールゲームズとは相性がいいw

インスト時、各プレイヤーからは溜め息やら感嘆やら形容しようのない声が少なくなかったのですが、意外にストレスなくプレイできてしまう不思議さは一体なんなのかと。

流石はパールゲームズと思わせる美しいコンポーネントにも注目。

ジェフ・アラーズのエッセン新作“シトラス”フロムdlpゲームズ。

名作“アクワイア”を思わせるタイル配置がメインの王道的ピュアユーロ。

シンプルでのんびりとした雰囲気から牧歌的なユーロかと思いましたが、実際にはあらゆる手段を講じて生き延びるジリジリピリピリの陣取りで、特殊タイルの取り合いも熱い仁義なき戦いに終始する始末。いやいいですねえw

見通しの良さ、シンプルで分かりやすいメカニクスとアクション、適度なランダム要素とインタラクション、そして高い収束性。こんないいゲームが作れるのか(失敬w)ということでアラーズを見直しました。

タイルの購入における面白いメカニクスやフィンカから4方向に伸びていく4色のタイルといったアイデアは高く評価されてもいいかなと。

ということで評価はPositive。まずシステムありきのシンプルなピュアユーロならではの風化に耐えうるリプレイバリュー面での強さにも十分期待できるか気がします。


以上エッセン新作4タイトル以外に、時間調整もかねてクニツィアの“綱渡り”(1ディールのみ)と“ドラダ”の2タイトルも立卓。旧作も楽しみました。


今年のエッセン新作も少しづつ消化できていますが、昨年に劣らず秀作が多い印象でなによりかと。

越前市(福井)ボードゲームの会 12月ゲーム会('13/12/15)

地元での年内最後のオープンゲーム会に参加してきました。

今回は県外からの参加者や小学生同伴で参加される方もいらっしゃり、総参加者15名とまずまずの賑い。

以下この日プレイしたゲームについて雑感を簡単にまとめておきます。

ドイツ人デザイナー、有名なステファン・ドラのエッセン新作“パシャ”から開始。

ダイスロールメインのアクションは少なからず運に依存するのは間違いないのですが、そのラウンドでの獲得点数を決定する手札の決定は自分の手番開始時であるため、手番において先行する他プレイヤーの手の内が分り切った状況で判断を下せるというのがまずは面白い。

またダイスの目を調整したりリロールを可能にするキューブの存在がシンプルなダイスゲームの本作に実に小気味よいジレンマを注入しており、流石はドラ。

特殊タイルの獲得はダイス目次第でなんともままならないのですが、これも強すぎない主張に好感が持てました。

傑作とまでは思いませんが、ドイツ産ダイスゲームの安定したクオリティの高さを伺わせる一作で評価はPositive-。一喜一憂できる楽しいひとときが楽しめます。


メビウスゲームズ20周年を記念して発表された巨匠クニツィアの“京都”。

4種類の絵柄からなるタイル。手番ではそのタイルを配置し、1枚ドローして終了という流れ。

タイルは1枚のみ手札として保持するので、タイルの選択はできず、場にどのように配置するかのみがプレイヤーの判断としてゲームに反映されます。

ゲーム開始時に各プレイヤー毎に獲得点数が2倍になる絵柄が示されるため、その点における各プレイヤーの駆け引きが本作の妙味。

実にシンプルで美しいルールだとは思いましたが、システムに比して運要素が強すぎる印象からノットフォーミー。少なからず期待していたタイトルでしたが残念ながら評価はNegative

客観的に見て、良質なジレンマに頭を悩ます好タイトルだとは思うのですが、個人的には全く合わないサイドのクニツィアの典型的な一作。


エッセン期待の新作のひとつ、“ケイラス”のウィリアム・アッティア“スパイリウム”。

イスタリらしいアイコンのみで効果の示された各種カードをメインとした拡大再生産。

昨今の要素が多めのタイトル群に比べればずっとシンプルで全体の見通しも分かりやすい部類に属すると思われますが、一手の決断が複数の結果への影響を及ぼす(これは今年のエッセンタイトル群の特徴のひとつとも思われるのですが)こともあり、適度なままならなさからリプレイ欲求も刺激され、実に面白い。

カードの枚数もそれほど多くはないので、すべての内容を熟知してからが、運要素低めで競技性の高い本作の新たなスタートか、という思いも。

おそらく相当なテストプレイによって極限まで理想的な数値バランスとなったであろう各種カード群が主軸となって抜群に高い完成度が本作にもたらされており、昨年の“蟻の国”に続く本作が、惚れ惚れとするようなイスタリ黄金期再来の予感すら感じさせます。

ゲーマーズゲームでありながら、ややシンプルすぎる面でのリプレイバリューの伸びに対する少々の不安もありますが評価はこれでどうだのPositive+

期待は裏切られませんでした。これだからテーブルゲームはやめられない。

今期エッセン、私のイチオシ“ロシアンレイルロード”、2回目のプレイ。

高いプレイアビリティと見通しの良さ、運要素低めで高い競技性、2時間以内で終わる高い収束性と密度の濃さ等々。そして欠点がさして見当たらない優等生タイトル。

キエフでの大量得点と?マーカーの恩恵を最大限に享受したプレイヤーに圧倒的な差で完敗というセッションでした。

度重なるワーカー配置という幾度にも渡る意思決定の反映が最終的な勝者とその他複数の敗者を決定するのでしょうね。マルチプレイヤーズゲームの場合敗色濃厚な第三者の意志の反映が当事者同士の勝負に影響を及ぼす面もあり、それもまた含めて醍醐味なのかな、とか。

勝因も敗因もどこにあったのか、プレイ後にあれこれ感想戦でセッションを見直すのもまた充実した時間をもたらしてくれます。

何はともあれ、先んずれば制す、という言葉の実践を今後のセッションにおいて自らに課したいと思います。

GM秋にて頒布された国産同人、桜遊庵の“春夏冬中(あきないちゅう)”。

16枚のカードから無作為に1枚を選び裏向きに場札とし、残りの全てのカードを全員に配った後で、全員でこの場札が何かを推理していく論理ゲーム。

名作“スルース”が日本人の手により2013年型として正しいベクトルを保ちつつアップデートされたと言えば当たらずとも遠からず、でしょうか。

メモをとってはならない、というのは至極真っ当なルールであることに異論は全くないのですが、短期記憶がさっぱり駄目な自分にとってこれは高すぎるハードルだったのが大変に残念だと思わせるくらいには本作は実にきっぱりと屹立した美しいゲームでした。

最後には音を上げて、参加者全員での合意のもとメモをとってもよいというバリアントルールを採用。やはりこちらの方が本作を楽しめましたが、まあこうなると勝者は手番順に少なからず左右されるかもしれませんね。

日本の四季をテーマにしたアートワークも美しく、評価はPositive。たった16枚(+1枚)のカードでここまで完成された世界がまだ作れるのですね。

この他写真撮影を失念したGM秋国産同人新作HOY GAMESの“たねまき”も面白く、この日唯一2回立卓しました。これは面白い独創的なアイデアが光るセットコレクションの佳作で、Positive-と評価しておきます。プレイアビリティは高いのですが奥行きの面と状況によっては単なる処理になる不安もあるかも。


以上6タイトル、7セッションを一日にわたり楽しみました。“スパイリウム”の完成度の高さに頭をガツンとやられた一日。国産同人のクオリティも十分高いな、と思う反面英米の本気の格の違いを思い知ると同時に、やはり自分の本道はこちらなのだな、と再確認。

2013/12/09

シュリンクを斬る!㉗ “アメリゴ(Amerigo)”の巻

エッセン新作が続々と我が家に到着しています。今回はキックスターター発、ここ日本でもファンの多いシュテファン・フェルト期待の新作“アメリゴ(http://boardgamegeek.com/boardgame/137408/amerigo)”の箱を開けます。

噂には聞いていましたが実際のところ相当なビッグサイズでした。

同じくフェルトの“マカオ”と比較。アレア大箱の約2倍の大きさ。

さてではシュリンクに入刀。ざっくり。

ずずず…と。

切れ目からフィルムを剥がします。

びりびり…。

ばっさり。

表にまわり、こちらもばっさり。

シュリンクが取り去られた本体“アメリゴ”です。

裏面全景。

アートワークはハラルド・リースケですね。編集にクィーン・ゲームズ・チームのクレジットが確認できます。

前回の“マデイラ”と同じくメイドインヨーロッパの表記。中国製ではないのでややほっとしましたw

英語をはじめ四か国語での表記。クィーンは昔から他国の言語についてもケアしているイメージがあるんですよね。

箱をあけました。ぱかっ。

まずはパンチングシート。

箱から取り出しました。こちらも相当な大きさ!

ひと目で非常に上質なアートワークがなされていることが分かるほどイラストの質が高く、これだけでプレイに対するモチベーションが刺激されました。

パンチングシート2枚目。

そして3枚目。タイルの量もたっぷりとあるようです。

手抜きのないアートワーク。非常に丁寧な仕事っぷり。

各シートに付されていたクレジット。くっついていたので取り出したのは3枚でしたが確かに全部で9枚ありました。

なんとか全部のタイルを打ち抜きました。抜きやすさはA(良い)~E(悪い)の5段階評価でBのやや良い。バリも少なく気持ちよく抜けてくれました。

各プレイヤーのステータスを表す個人ボード。全部で4枚。

メインボードを形成する各部のマップとそれを囲み固定するフレーム。

各プレイヤーに支給される村タイルなど。全4色。

リソースの類い。正方形のチットタイプ。

アクションのためのキューブが置かれるサブのボード。クラマーフレームも採用されています。

パンチングシートの下からはルールブックが現れました。

ボックス背面と同じくこちらも4か国語分ありました。

美しいルールブックの中身。

クィーンのルールブックといえばこのフォントですね。

ルールブックの下からキューブタワーの各パーツが。

箱から取り出しました。全部で3つのパーツからなるわけですね。

組み立ててみました。“ヴァレンシュタイン”や“将軍”でもお馴染み、存在感十分な巨大キューブタワーです。

ここからアクションキューブを投入するわけですね。内部の複雑な構造が適度なランダム性を発生させる仕組み。

ここからキューブが排出され受け皿へと出てくるわけです。

箱に残っていた最後のコンポーネントが木製コマと仕分けのための袋数枚。

各プレイヤーのためのコマ。こうして並べてみると欠品がないのが一目瞭然です。

折角なのでいろんな角度からパチリ。木製コマ、大好きなんです。

残りの木製コマ、アクションキューブも並べて検品。

コンポーネントはいづれも非常に良質なドイツゲームクオリティ。

それでは箱にしまっていきます。パンチングシートの残骸をスペーサーとして利用しました。

いくらかの試行錯誤ののち、本作のコンポーネント収納をこのように行いました。まずはこれが第一段階。

第二段階。

第三段階。

第四段階。フレームと個人ボードを納めます。

第五段階。キューブタワーの受け皿をここで納めます。

アクションの選択等に利用するサブのボード。

ルールブック4冊。スペーサーを採用するとかなりギリギリ。

ふたをして終了。

アートワークや木製コマなどコンポーネントの質は総じて良質で、これぞドイツゲームと思えるものでした。たしかな手応えがありましたね。メビウスなどからの国内流通開始が待たれます。

あとはフェルトのルールメイクですね。期待してセッションの日を待ちたいと思います。