“BUS”(ジェロエン・ドゥーメン、ヨーリス・ヴァイエルジンガー/スプロッター・スペレン/1999年)
この日はネーデルラントの皇帝、スプロッターの15年前のタイトルから開始。3人で。
“ケイラス”、“モルゲンランド”と共にワーカープレイスメントの三大始祖とされるタイトルのひとつで、メカニクスとしてはネットワークビルド、ピックアンドデリバー、そしてワーカープレイスメント(早い者勝ちのアクション選択特有のヒリヒリした感覚からそう言ってしまってもいいと僕自身は思いました)などなど。
ゲーム開始時に支給される20個のキューブ。ラウンド毎に最低2個はアクション選択エリアに配置することが義務で、1ラウンドに3個以上のキューブもプレイヤーの任意で配置できますが20個のキューブを使いきったプレイヤーは以後ゲーム終了までアクションには参加できません。つまり1ゲームを通して20アクションが可能なアクションポイント制のメカニクスと捉えることも可能なわけです。(そしてそこからワーカープレイスメントはアクションポイント制のメカニクスから派生したという視点もあり得るかもしれません。)
配置フェイズで全員がパスしたら今度はアクションを実行していきます。
運要素ゼロ、テキストゼロの風通しの良いユーロで、ワーカープレイスメント特有のアクション選択における椅子取りゲームとゲームボード上のネットワーク構築は厳しい制限から陣取りの要素も孕んでおり、これらのもたらす濃密なインタラクションがなんといっても本作の醍醐味。
セッションが進むにつれネットワークや建物が増えていくことで徐々に増加していく情報量が適度な盛り上がりをもたらしている点も見逃せない。
もっとも印象的だったのが、配置フェイズでのキューブ配置の“順序”と実行フェイズでのアクション実行の“順序”がそれぞれ個別にしっかりと規定されていることで、このアイデアがプレイヤー間の熱い駆引きや盤面への反映に妙味をもたらすことに成功していることです。
インスト込み90分で終わる収束性も素晴らしく評価はPositive+。ボードゲーム史においてあまり取り上げられることのないタイトルという印象がありますが少なくともユーロ愛好者であれば是非一度はプレイするべきで、話題の少なさから埋もれた名作のような残念な一作という印象も。絶版入手難なのでまずはプレイにこぎつけるまでにひとつハードルがありますが、再版される価値は十分ある一作かと。
純粋に自分だけのネットワークで循環するバス路線という夢は実現するでしょうか。
“シトラス”(ジェフリー・D・アラーズ/dlpゲームズ/2013年)
アラーズの昨年の新作を3人で。3人ははじめて。
メカニクスとしてタイル配置、エリアマジョリティ、特殊タイルなどなどが採用されている、こちらもシンプルで風通しのよいピュアユーロ。
タイル購入における独特で面白い市場のメカニクス、また中立地帯やその合併、フィンカへの影響力をめぐる陣取りなど個々の要素が有機的にうまく絡み合っており、ゲームは十分に楽しめるものに仕上がっています。
攻略の糸口として、自分の農園をなるべく複数のフィンカに接続することで得点効率を上げることや市場での残タイル枚数がなるべく多くなることをめざす市場マネジメント、そしてゲーム全編を通してカツカツの資金繰りが強いられる本作に置いて資金獲得の数少ないチャンスである収穫のタイミングへの目配せなどが上げられると思いますが、これら勝つためのマネジメントを意識することで本作ならではの奥深い醍醐味が見えてきます。
これ以上でもこれ以下でもない全体的なボリュームが自分の好みにマッチしていることもあって非常に好印象。評価はPositive。
BGG推奨のプレイヤー数3人は確かに本作に合っているかもしれません。4人も悪くなかったですがこの時のセッションでも3人という限られた情報量の中でコンパクトに足を引っ張り合うことで本作ならではの妙味を引き出してくれていました。
“ルイス・クラーク探検隊”(セドリック・シャブースト/アスモデ/2013年)
国内流通の始まった新作。ここから4人で。
メカニクスとしてはハンドマネジメント、ワーカープレイスメント、リソースマネジメント、デッキビルドといったあたり。
設定上レースゲーム的なフレーバーもありますがこれは単に得点トラックをそのように仕立て上げているだけで、フレーバーとしては太平洋に最も早く到達したプレイヤーの勝利となっていますが要は規定の勝利点を最も早く獲得したプレイヤーの勝利と理解できるかと。
メカニクスとしてはいろいろ上げられると思いますが、メインとなるのは手札の管理で、このカード自体表と裏二通りの使い方があることからこれだけでもプレイヤーが要求されるスキルのハードルは自ずと高いものであることが窺い知れます。
また手札に限らず余分なリソースの保持は、実質的に勝利点を獲得するフェイズにおいて減点の対象となることから当初からの計画的な管理が要求されます。
緻密な手札と資源のマネジメントが本作の醍醐味で、うまくマネジメントできたときの達成感は大きいものがあり、また同時にその点での可能性も十分に秘めているというのが本作の魅力ではないかと。
初回での4人プレイ(因みにBGG推奨は3人)という条件のせいかインスト込み4時間オーバーという長いセッションになってしまい、やや収束性に難ありという印象は拭えず、評価はPositive-。
このボリュームをどう受け止めるのか、そこで個人毎の好き嫌いが分れてきそうな気がします。しかし少なくない人物カードの多岐に渡る雑多な能力の数々が分かりやすいアイコンで記号化されているためプレイアビリティは情報量に比して高いことも評価できます。
“ジュリエットと怪物”(マルセル・アンドレ・カサソラ・メルクル/カサソラ/2006年)
メルクルの8年前のカードゲームを国内のパブリッシャー、ニューゲームズオーダーが昨年独自に再版したものを初プレイ。
メカニクスとしては山札からのドローやプレイヤー間のドラフト、ゴーアウト型のカードゲームと捉えることもできますが、手札の内容により勝利条件が各々のプレイヤーで異なることも特徴。
自分がジュリエットを保持していないのであれば怪物を使いジュリエットの捕食を目指しますが、保持しているのであればなるべく早く山札を枯渇させる(朝が来ることを目指す?)ことが勝利への指針となります。
特徴的なのが手札の並べ方がルールによってしっかりと規定されており(カードスタンドは必須かと)、その法則性を踏まえた上での他プレイヤーの手札の内容の推理が本作の最大の醍醐味で、ここが楽しめるかどうかで本作の評価は分かれる気がします。
以上のことからメモリー要素もあり記憶力に自身のない僕には十分に楽しめなかったというのが本音で印象はNegative+。メルクルは大好きなデザイナーのひとりなのですがね。
しかしメルクルのゲームのこの強烈なまでのオリジナリティの高さよ。楽しめなかったのはプレイヤーのスキルに問題があるとまで主張してくるような、そんな感じすら受けました。
“新しい学”(ディルク・ネメヤー/コンキスタドール・ゲームズ/2013年)
米国のパブリッシャーから昨年発表されたユーロを初プレイ。4人。
メカニクスはワーカープレイスメント、テックツリー、パラメータ管理などで、ここに運要素として各ラウンド2枚のイベントカードと実験アクション実行時のダイスロールが絡む。
ゲームボード中央に本作のメインとして堂々と配された、研究、実験、出版という三段階で構成される各種発見が因果関係のように樹形図として系統立てられたテックツリーがまずは好事家には堪らないアピールポイントか。(かくいう僕もテックツリーは大好きw)
プレイヤーが本世界に介入できる各種アクションはシンプルと言ってもよいワーカープレイスメントそのもので処理され、ここでの揺らぎのなさ、言い訳の出来ない歯切れの良さからは本作の競技志向の強さを予感させるのに十分なものが整えられています。にもかかわらず、一部のイベントカードのやや極端な内容や救済措置のないダイスロールは本作の主旨にそぐわないという意味で違和感を覚えるプレイヤーもいるかもしれませんね。
ランダマイザとして採用されている1D6が大味なアメゲーの印象を本作に持ち込んでいるとも取れ、そこが僕には本作の数少ないマイナスイメージポイントで、これなら休息ポイント周辺のデベロップやダイスの数を増やすことでもう少し本作の主旨に近づけたような気も。(もっとも僕なら本作から運要素は一切排除し、プレイヤー間のインタラクションのみで全編を貫いたかもしれませんが。)
統一感のある美しいアートワークや数学、天文学、物理といった理系の学問をテーマとしているところは完全に僕の好みに合致しているのですが、上記何点か気になる点も否定できず総合評価はNegative+。4人プレイで15ラウンドというのも長すぎるという印象。
やはりランダマイザは面白さを左右する重要な要素だな、と再確認したセッションでもありました。
“カラスと水差し”(シーン・D・マクドナルド/フィフス・ストリート・ゲームズ/2010年)
先日のセッションにひきつづきこちらの希望にて立卓。4人。
“パスティーシュ”の作者によるイソップ童話をモチーフにしたトリックテイク。
瓶の大きさとそれに入れる石の大きさというイメージが元々のテーマとのマッチングもよく、トリックテイクにしてはメカニクスとテーマの親和性も感じられるという意味で稀有といってもいいかと。
先日の初回プレイではこちら側に今一つルールの理解不足を感じていたのですが、今回のセッションでしっかり理解できたのもあって、じつはかなりシンプルと言っても過言ではないような、オーソドックスなタイトルという印象も。
各トリックはマストフォローの結果によりカラスが水を飲めるか否か、あるいはリードカードが喉の渇きカード時のペナルティカードの押し付け合いという3パターンに分類されるということをまずは理解するのが本作の出発点。
手札による選択のジレンマがやや希薄な印象で、そこはマイナスポイントなのですが、テーマの再現性という魅力からくるのか、本作ならではの妙味もあって、独特の魅力はありますね。
得点の高い数値の小さいカードは水を溢れさせないために利用するのでしょうが、そこが4人ゆえでしょうか、今一つ機能していない印象もあって、良質なジレンマにあと一歩届かずという印象も拭えず、評価はNegative+。一度3人でのプレイも試してみたいところです。
この後アフターでサイゼリアへ。感想戦に花が咲き閉店時刻の深夜12時まで4人で話し込みました。
クローズ会はじっくりとゲームに向き合えるのが最大の醍醐味ですね。参加していただいた皆様に謝意を。また卓を囲みましょう。
【付記】なお当日の様子は参加者のひとりyskさんによりこちらでもレポートされております。是非ご覧ください。
気になるゲームばっかだったので、楽しみにしてました。
返信削除写真がいつもキレイですね。
BUS はややこしいイメージがあるのですが、やってみればわかるものなのでしょうか?
いつもコメントありがとうございます。
削除バスはスプロッターですがルール自体は特にどうということもないシンプルなもので、プレイもしやすい好タイトルでした。ただpgdbでの公開和訳に何点か誤訳があるのでこちらを利用される場合英文ルールとの対査も必要になると思います。どうぞご注意下さい。
はじめまして。
返信削除BUS、まだスプロッターのサイトから直接購入できるようです。(お高めですが)
当方も半年前に購入したまま積み上げています。。。
貴重な情報ありがとうございます。
削除早速サイトの方へ飛んでまいりましたw 確かに購入可能なんですねぇ。
しかし90ユーロは簡単には手が…w
いいゲームなんでもう少し考えてみます。
ありがとうございました。(^^)