2013/11/29

UDA土曜ゲーム会 “第一回エッセン新作会”('13/11/23)

先日の自宅ゲームスペース“UDA”にて4人でプレイしたタイトルの雑感、感想などをこちらにてまとめておきます。

この日は時期柄エッセンのシュピール13にて発表された新作中心の立卓、さながらエッセン新作テイスティング会の様相となりました。

まずはこちら、アルゲントゥムからの新鋭アーロン・ハーグ(Aaron Haag)による“雲南省”(Yunnanhttp://boardgamegeek.com/boardgame/143401/yunnan)から。

やや独特なメカニクスを持つ競りを中心にした“競りフェイズ”とその後の行商人の移動や建物の建築を行う“輸送フェイズ”から1ラウンドが成り立ち、いづれかのプレイヤーが80点以上となるか、マップ上から贈り物タイルがなくなるかのいづれかで終了フラグが立ちます。

“競りフェイズ”では5つの建物に入札し、その入札に成功すれば建物に対応する5つのアクションが実行できます。

この競りが少々独特。
5つの建物それぞれには5、7、9、12、15の競り値に対応した5つのスペースがあります。5、7の二つは小スペース、9、12、15の三つは大スペースと区別されています。
5か7の小スペースで最大の入札額として入札できるのであれば(つまり大スペースへの入札者がまだいない)必ずそこへ入札する義務があります。(注:この後確認したところルールの明確化が行われた模様で、これは義務ではなく、可能とのこと。つまり大スペースに入札者がいない場合のみ小スペースに入札“できる”。)しかし小スペースでの入札はより高値での入札に弱く、オーバービッドで入札は取り消されます。
一方大スペースでの入札には絶対に取り消されることがないという強みがあります。

この独特の構造をもった競りと、中国からチベットにかけて広がるマップ上でのプレイヤー間のやりとり、そのふたつが濃密に絡んでいることで本作ならではの妙味がうまれています。

思うにこの競りは同一内容のアクションながらコストに大小の差があるワーカープレイスメントと見ることも可能で、そう考えると本作も氾濫するWPバリエーションのひとつといえるかもしれません。

この競り以外にも監察官や影響力、銀行、一本道のマップ、そしてショートカットの橋など独特なアイデアが少なくなく、またそれらがしっかりゲーム本来の面白さにつながっているあたりは本作が新人デザイナーの手により成されたものであることを再確認させるほど。
雑多な個々のアイデアをここまで纏め上げたのは、アルゲントゥムをはじめとする周辺のデベロップにも恵まれたのではないかと。

まだ検討したい箇所も少なくないのですがPositiveと評価。今回のセッションは橋と交易所を上手く配置したプレイヤーの一手による大逆転にて終幕となったのも印象に強く残りました。

しかしアルゲントゥムのこの拭い去れないB級ぽさって一体…。

つづいてウォルフガング・クラマーとミヒャエル・キースリングによるコスモスからの“ノーティカス”(Nauticushttp://boardgamegeek.com/boardgame/144415/nauticus)。

先日のセッションにつづき、今回2回目のプレイ。

帆船の建造をメインにしたテーマこそあるもののそれはあくまでも味付け程度のもので、しっかりと作られたシステムこそが醍醐味となる、最新型のピュアユーロ。

名作“プエルトリコ”のようにスタートプレイヤーが任意にアクションを選択し、そのアクションを全員が順次行うというメカニクスが採用されており、プレイヤーには全体の場への目配りと仕掛けるタイミングの判断が任せられます。

また“プエルトリコ”と同じように、アクションの選択を行ったプレイヤーにはターラーや勝利点などの恩恵が与えられます。

シンプルでクリアな個々のメカニクス、1ターラー1ワーカーの重み、大切さを感じさせる繊細なリソースマネジメントなどユーロの持つ魅力がしっかりと取り入れられており、愛好者の僕のような者には印象は良好ではないかと。

サイズ4の船を造り、大量得点を得る“4船戦略”がどうも強いように思えますが(前回も今回も唯一のサイズ4船建造者が勝利しました)、王冠に特化しここでの得点に一日の長を見出す“王冠戦略”やサイズ1の船を量産し商品の出荷で点数を伸ばす“1船戦略”なども研究の余地がありそうです。

慣れればセットアップ10分、インスト10分でゲームが始められそうなのも美点。

非常に真っ当で、翻って華がなく、媚びるような色気がないため不特定多数のプレイヤーへの訴求力の不足は懸念されますが、まあこれもユーロの定めかw

メビウスからの国内流通がなかったらこのまま埋もれる可能性もありますが、それは惜しいと思える佳作。評価は前回と同じくやはりPositive

ドイツゲームの老舗、ハンス・イム・グリュックはエッセンにあわせて本作をリリースしてきました。ヘルムート・オーリーとレオナルド・オルグラーによる“ロシア鉄道”(Russian Railroadshttp://boardgamegeek.com/boardgame/144733/russian-railroads)です。

ハンスにしては珍しい24ページにもわたる大部なルールブックに尻込みしてしまいそうになりますが、実際にプレイしてみるとなんのことはない、非常にプレイアビリティの高いオーソドックスともいえるワーカープレイスメントであることが分かります。

手番には1個か2個の要求されているワーカーをアクションマスに配置し、そのアクションを即時実行するか、いずれのアクションも選択しないパス(ちなみにハードパスです)かの二択。
これを全員がパスするまで続けると1ラウンド終了で、ゲームは4人プレイ時7ラウンドで終了します。

タイトルに鉄道とありますが、それはフレーバーのみで、実際にはネットワークビルドなどの要素はなく、王道的ワーカープレイスメント。

個人ボードは各自のステータスやパラメータを管理するもので、ともすれば淡泊なこの部分にフレーバーとして鉄道をのせ、プレイヤーに数値管理を楽しませるよううまく錯覚させていると見ることも可能かもしれない。

ただ本作の醍醐味は戦略の取り様が実にふんだんに準備されているにも関わらず、見事な構成、完成度からプレイヤーには所謂トゥーマッチな感覚を感じさせず、あっという間に終わってしまう1ゲームの中で、あれこれやりたいのにその半分もできないという飢餓感からすべてのプレイヤーをテーブルに前のめりにさせてしまうほど意識を集中させてしまう、その点にあるのではないかと。

勝利のための最善手、判断とそこからのフィードバックを点数単位で把握しようとすると、多くのプレイヤーにキャパシティオーバーの感覚を与えるかもしれず、競技性最優先のプレイヤーにはその点で不満が残るか。

まあしかし激しいアクションの争奪戦が繰り広げられるメインボードと、保護が約束されている個人ボードというこの二部構成にはもはや普遍的な妙味がありますね。

各種の戦略による獲得勝利点バランスなど検討課題はありますが評価はPositive

こんなフリーク向けと思えるゲームなのに、意を決して飛び込んでプレイするとそこにはファミリーという言葉さえちらちらと想起させるこのハンスの暖かさは一体何なんだろう。

意欲的かつコンスタントに良作を発表しているマック・ゲルツのエッセン新作はおなじみPD出版からの、なんと久しぶりの非ロンデル、“コンコルディア”(Concordiahttp://boardgamegeek.com/boardgame/124361/concordia)。

全9種の人物カード。プレイヤーはそれらの一部を手札とし、手番には1枚をプレイしてコマの移動や建物の建設、リソースの獲得、そして使用済みの捨て札の回収まで個々のカードに対応するアクションを実行します。
このカードにはゲーム終了時の決算の条件についても付記されており、厳密には、行いたいアクションと行いたい決算のふたつを考慮したカードの収集が要求されます。

その他ダッチオークションや保持できるリソースが厳しく制限されている中でのリソース管理など、多くのドイツゲーム愛好者に好評をもって迎えられそうなメカニクスが採用された質実剛健たるゲルツのユーロ。

美しい地中海マップを舞台に、如何に先行し版図をひろげていくかという仁義なき陣取り合戦と、そこで得た都市から産出されるリソースが先述した厳しいリソース管理と密接に絡んでくるので、マゾ度はなかなかのものが。

全体的なルールの分量は少ないにも拘らず、陸路海路の二種類の経路で絡まりあった各都市からなる全体像は、すべてを把握しようとすると大変なものがあり、とはいっても避けられない部分もあるので、プレイヤーに対する負担の大きさは軽視できないという気もしました。

一回目のプレイはルールラーニングと割り切り、各種カードのアクション、都市建設のための必要なコストや決算の方法などが頭に入った二回目からはプレイアビリティも上がるかも。

十分な完成度でリプレイバリューも肯定しますが、錯綜するネットワークなどが個人的にはややオーバーで、評価はPositive-

決算まで含めたトータルなプレイングで勝敗を決してくるような情報処理に長けたプレイヤーには素直に引導を渡しますw

最後に残り時間の関係から(ラーメン屋さんのラストオーダー午前0時5分に間に合わないかもしれないw)予定していた“アメリカン・レイルズ”はとりやめ、十式ゲームワークスのGM秋正式リリースとなった“トロージャン”で〆。

役を作って場にプレイし、手札をなくすことを目指すシンプルなゴー・アウト型ですが、最初にペナルティ条件として裏向きでプレイする“トロイの木馬”カードが良質な唐辛子のように効いていて、このいわば危険牌ともいえるカードをめぐる読み合い、回避、そして他プレイヤーへのなすりつけなどが本作の醍醐味。

時間の関係で2ラウンド目途中までのプレイで協議終了となってしまったのが残念なくらいセッションは充実していました。

リプレイバリューは十分で評価はPositive。ゲーム慣れしているプレイヤーほど本作を楽しめるような気がします。


以上にて終了。

こうして実際プレイしてみると、昨年の当たり年のラインナップに比して小粒感のある今年のエッセン新作ですが、じつはスルーするには勿体ない良作が少なくないのではないかという気がしてきます。

次回の第二回エッセン新作会を今から期待して待っています。

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