今回は時節柄ゲームマーケット2014春で入手した国産同人タイトルが多め。
“シンデレラが多すぎる”(大気圏内ゲームズ/2014年)
18枚のカード(言い換えると18人のシンデレラ候補)と各プレイヤーに支給されるOKとNOの2枚のマーカー、それにエクストラのマーカー1枚というたったそれだけのコンポーネントのみで構成された大気圏内ゲームズの通算4タイトル目。
4枚の手札から各人が2枚プレイ、追加で山札から1枚をプレイすることで場に並べられた合計9枚の場札から“シンデレラの条件”が排他的に決定されます。プレイヤーは残された2枚の手札から条件に見合うシンデレラを最後にプレイし、勝敗を決します。
シンプルなシステムゆえ10分で終わる1ゲームの中に、如何に場の流れをコントロールすればいいのか、あれでもないこれでもないといった感じで良質なジレンマがしっかりと盛り込まれており、終了時にはちゃんとゲームをプレイした満足感が齎されるあたりは流石。Positive-。
フィラーゆえの小品感、運要素強めな点は否定できないけれど、切れよく完結しており、潔い。
淡泊で主張しすぎない味のある大人のアートワークがまたこのユーロでシンプルなゲーム内容ともよくマッチしていてその点の好感度も。
フィラーとして相当に優秀で、これは“ラブレター”に対する大気圏内ゲームズからの返答か。
“仮面の王”(遊星からのフリーキック/2014年)
開始時秘密裏に光、闇、炎の三陣営に分かれ、それぞれのプレイヤーがそれぞれの勝利条件を満たすことを目指します。
誰が味方で誰が敵なのか、ゲームが進むにつれ徐々に正体が明らかになっていく中で、場に並んだ領地を上手くマネジメントしていく手腕が問われる濃厚なタイトル。
プレイヤー数×6枚のカードと約40枚のコイン(別途準備する必要あり)という数少ないコンポーネントでここまでゲーム性豊かな一種の正体隠匿系をデザインできるあたりに本デザイナーのゲーム制作に対する理解の深さを感じずにはいられず、いまの日本でこのような豊かなオリジナリティを提供できる製作者がどれほどいるだろうか、と思ったり。
反面プレイヤーに求められる敷居の高さや全体を通しての冗長性、ゲーム開始にあたっての準備における未完成と思しき箇所、一部ルールの粗さには今回のバージョンがプロトタイプから一歩完成に近づいたベータバージョンゆえのものもあり、本バージョンでの評価はNegative+。
しかしこのゲームならではのゾクゾクするようなゲーム性豊かな壮大なヴィジョンには期待せずにはいられないものがあり、今後のデベロップと完成を焦らずに待ちたいもの。
度重なるリプレイに耐えうる体力も持ち得ている予感。
それにしてもてらしまさんはテクストを用いたゲーム作りが上手いという印象。
“いしがき・れえす”(をしだや/2014年)
変形双六の国産同人新作。
ダイスを振るか振らないかという単純な二択からシンプルなジレンマを楽しむお手軽タイトル。
終盤まで誰が勝者になるか予想できない抜きつ抜かれつの締まった展開になるあたり、簡素ながら諸数値の設定に配慮がなされているせいかな、とか思ったり。
が小品が小品から抜き出せてはいないことも確かで(それはまったく悪い事ではないのですが)、僕のようなフリークがあえて本作を求める理由は希薄で、評価はNegative+。
とはいえ“マイナス2”のマスが登場する裏面も一度はプレイしてみたいもの。けして悪くはない。
“襲ノ色目”(桜遊庵/2014年)
場札からカードを補充しつつ設定されている役を作り得点とするセットコレクション。役の達成は早い者勝ち。また手札は並び替えてはならないボーナンザ方式。
システムはシンプルかつ明快なユーロ。しっかりと構成された穴のないルールから安心してセットコレクションの醍醐味が味わえる快作。
役は基本的に枚数が多いほど高得点ながらそこは早い者勝ちなのでどこで達成を宣言するか、そこがまずは(良質な)ジレンマ。情報量はそれほど多くはないので、なんとなくでもいいので他者の取ったカードから大体の狙いは想定することが可能(そしてそこから役のバッティングを回避していきたい)で、おそらく作者もそういったプレイを念頭に置いてデザインしていたのではないかと。
良質でスタンダードな純和風テーマのセットコレクションでリプレイにも十分耐えうる体力もありそうだ。ここでゴチャゴチャと要素を増やさなかったのは正解。Positive-。
和風で統一された各種コンポーネントとテーマの融和性も十分で、過去の作品も考慮するとこの和風テイストを前面に押し出してくる作風はここのサークルならではの持ち味であり魅力とも。アートワークのクオリティも高く、外箱も含めた全体の統一感からも拘りが見て取れる。
“想像と言葉”(米光と優秀なゲームデザイナーたち/2014年)
巾着袋からドローされた3枚のタイルの3つの単語からひとつ(親は特権でふたつ)言葉を連想していくワードゲーム。
連想した言葉を他者と共有できれば得点となるのでなるべくマジョリティの得られそうな言葉を解答したいところ。
シンプルなワードゲームでルールを読んだ時点での感触は悪くなかったのだけれど、実際にプレイしてみるとこれがなかなか柔軟な想像力が要求されるタイトルで、ゲームをプレイしている楽しみというより個人的な能力を試されているような一種圧力的な感覚が勝っていたのか、あまりゲームとして楽しめた感覚が得られなかったというのが正直なところ。Negative。
この辺りの感覚はワードゲームで時々顔を出すようにも思える部分で、本作について言えば匙加減が自分にはハード過ぎたのかもしれない。着眼点は素晴らしいとも思っているんですが。
“GRUND”(青い街/2014年)
ドイツ語タイトルで地味ながら良質な作品を発表してきた実力派サークルのGM14春の新作。
親と子が1対1でシンプルながら奥深い心理戦を行うブラフ系。
低リスク低リターンの“忠誠”と高リスク高リターンの“反逆”と捉えることも可能な得点システムが秀逸で、このよくできたメインの骨子から豊饒な心理戦の妙味がたっぷりと味わえる、いぶし銀の秀作。Positive-。
ディール次第では判断の幅が限定されることも少なくないが、それも含めて親に対する巧妙なブラフになり得る、というと考えすぎというか言いすぎかな。
リプレイ欲求を刺激する、本日の“もう一度やって確かめたいで賞”はこれか。
“アンリミテッド富豪”(ぽんこつファーム/2014年)
赤と黄色、そして何枚かのコインの追加で戦略性のアップした“大富豪”が楽しめる、一種の“大富豪”バリエーション。
当然ながら目新しさというかオリジナリティに乏しいという面はあるけれど、コインという一種のペナルティを背負うことでカードの数字をほぼ任意に変更できるというルールからシンプルな戦略性と良質なジレンマが生み出されており、もしテーブルゲームの中に“大富豪バリエーション”というサブジャンルがあれば本作はその中でもかなり上位にランクインしそうな完成度の高さはあるかと。
まあ僕は既視性の強さというか、ゼロからの創作ではないという点で辛くNegative+としますが、完成度は素晴らしいものがあり、多くの人にワンプレイを勧められる秀作。
“誰でもルールを知っている”というのは強力な土台で、それを有効な武器としたこういうアプローチの仕方もあるんだな、という思いも。
というわけで今度は“人生ゲーム”のドイツゲーム的バリエーションの登場が待たれますね(ないかw)。
“ドラコの山分け”(ガーデンゲームズ/2014年)
良質で質実剛健な作風のピュアユーロを発表してきた実力派サークルの新作。
極めて限定された色と数字、そして6枚の“呪い”カードのみで豊かなジレンマ、ゲーム性が生まれており、今までのガーデンゲームズタイトル同様こちらもも完成度の高い一作に仕上げてきたという印象。
ジリジリ、ヒリヒリとした得点中心の熱いせめぎ合いがセッションのメインになることを考えると、呪いカードの登場における運要素の高さが僕はやや気になった点としてあったけれど、まあこれくらいの方が胃に優しい(笑)のかもしれないw
数値バランスの設定や2枚ボーナスというアイデアなどが完成度に寄与していて、現代の卓上カードゲームの醍醐味がしっかりと堪能できる安心の一作。Positive-。
アートワークに頼ることなく、ゲームルールやシステムの完成度のみで勝負してくるこういう作風は今の国内市場ではどうしても埋もれがちになってしまうのが残念でならないが、ユーロの魅力は何か、その好サンプルともとれる本作のプレイを僕はひろく勧めたい。こういうタイトルは“ゲームならではの面白さ”とは何かが分っていないと作れないのです。
“死神セクト”(さとーふぁみりあ/2014年)
遂に完成をみた“死神コイン”。
天使と悪魔の二陣営に分かれ、一種のブラインドビッディングで場のカードの獲得を目指します。
両陣営それぞれにプレイされたカードの数値の和を比較し、より大きい陣営がカードの獲得権利を得ますが、獲得できるのはその陣営で最も小さい数値のカードをプレイしたプレイヤーというアイデアが本作ならではの妙味を生み出している。
手札からどのカードをどの陣営にプレイするかがプレイヤーの判断となるのですが、コアなフリークといっていい僕のようなプレイヤーから見ると、その判断のための情報量が余りにも少なく、それゆえそれが競技性(そしてもっといえばゲーム性)の希薄さにもつながっているという印象はある。
ただむしろそれはデザイナーの意図していたところで、感覚的なプレイでもってそれほどガチな空気を演出せず、テーマやアートワークも含めたこの高い作品世界の魅力を楽しむカジュアルゲーマーのためのカジュアルゲームと捉えればその完成度は非常に高いものがあるかと。
エンボス加工された美しいカードに載る素晴らしいアートワークには惚れ惚れせずにはいられないというのが正直なところでアートワークやコンポーネントの魅力がゲーム本来の面白さを後押しすることを証明する好サンプルがここに。
トータルなプロダクツとしての完成度は同人の域を大きく抜きん出ているといっても過言ではなく、システムのみではノットフォーミー(といっても僕のようなすれっからしにとって、という意味ですがw)ながら所有欲を満たす数少ない同人タイトルの本作にPositive-を。
難癖も付けましたがリプレイバリューも十分ですね。
以上9タイトルのほか、“犯人は踊る新版”、“カプチーノ”、“ディクシット”の3タイトルもプレイできました。
“犯人は踊る新版”は4人と8人でプレイ。犯人や探偵と絡むことのないプレイヤーが少なくない8人プレイは本作にはややそぐわない人数かも。
コンポーネントが秀逸な“カプチーノ”も連続で結局2回プレイ。見た目は可愛いですが中身はガチな多人数アブ。普通に女性に負けましたw
定番中の定番“ディクシット”。何度やっても面白い。これがSDJに選ばれたのはヒットでしょう。
以上この日は12種ものゲームがプレイできました。何回か連続してプレイしたタイトルも少なくなく、非常に充実したゲーム会だったと思います。
参加していただいたみなさん、ありがとうございました。またの参加をお待ちしております。ではまた次回も宜しく。
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