11月と12月にもいつものように開催していたのですが(エッセン新作の数々をメインに消化できました)、忙しさにかまけて更新していなかったので中2か月空けて、ということになりますが、今月分はいつも通りの感じでプレイしたタイトルについて簡単な感想をこちらに書き留めておきます。
“フレッシュフィッシュ新版”(フリーデマン・フリーゼ/2Fシュピーレ/2014年)
まずはフリーゼ自身の手により新しく生まれかわった“フレッシュ・フィッシュ”から。
自分のお店とトラックを最短距離で結ぶことが目的のパズルチックなユーロ。
手番は二択で①予約ディスクの配置、②山のタイルをめくり配置、のいずれかを行います。②のアクションで“店”タイルを引いた場合競りとなりプレイヤー間で握り競りによる競合が始まります。
1997年に発表されている旧版ではやや分かりにくいことから“抜け”の心配があった“道路”の設置に関する処理(フリーゼ自身の言葉を引用するなら「多くのプレイヤーは道を可視化するのに困難を感じました」)。この部分が特異でやや敷居の高い印象をもたらしていたのが旧版でしたが、この部分がまずは随分と分かりやすいルールに改められており、またそれに伴い全体的にルールは分かりやすく、新規参入にあたっての敷居が低くなったというのが第一印象。
この改訂でプレイアビリティは間違いなく上昇しているのですが、同時にフリーゼらしいと僕には思えた旧版ならではのフリーク受けの良い妙味も減退しているようで、ここが新版の評価の分かれ目になりそう。
とはいえ予約ディスクの配置やタイルのドローのタイミングをめぐるプレイヤー間の駆引きは本作でも十分に楽しめるもので、僕はまずは新版でやってみてそれから同梱されている旧版のルールにも挑戦してみるというのもひとつの選択肢かな、と。(幸いにもボード裏面が97年旧版に対応している一種のリバーシブル仕様です。)
総じて分かりやすく60分で終わるきっぱりとしたピュアユーロ。Neutral+。
“ダンジョン・バザール”(P・セチェット、S・ルキアーニ、D・タスキーニ/クレイニオ・クリエイション/2014年)
“ツォルキン”のコンビ+1名による注目のエッセン新作。
プレイヤーはダンジョンに挑むいわば勇者たちにアイテムを売る商人。ただ自らがゴブリンを率いてダンジョンにももぐりオーガや会計士といったキャラクターと取引きもするというもの。
メカニクスとしてはエリアマジョリティ、ポイント制アクション選択、ドラフトなど。
最初にそのラウンドに登場する勇者たちが公開され、そこの情報をもとに今回売り出す商品にめぼしを付けてダンジョンに入り、手に入ったアイテムたちを清算フェイズで勇者たちに売り捌いていくという流れ。
テーマ、フレーバー面での出来は良く出来ており、細部まで手抜きのない美しいアートワークもあって世界観は十分楽しめるのですが、(これがあの“ツォルキン”の2人なのかと思わずにはいられない)細かい部分でのルールの粗さやバランスの調整不足感はセッションを通して終始感じられるもので、ダイヤの原石のような、秀作にもなりえた可能性は感じられるものの、あと一歩が足りない惜しい一作という印象。システムも世界観に沿ったもので全体的なマッチングはかっちりしているのですが。
あとカード、タイル等のいくつかのエラーがかなりのマイナスポイント(これが最近では稀に見る相当大きなもので…。納期に間に合わせるため相当急いだ?)で評価はNeutral-。こういうヒューマンエラーにはどうしても厳しくなってしまうなあ…。
“グラスロード”(ウヴェ・ローゼンベルク/フォイヤーラント/2013年)
チェコ共和国国境付近、バイエルンの森を貫く240キロの“ガラスの道”を舞台にしたハンドマネジメント、リソースマネジメント、バッティング等がメインメカニクスのゲーム。
全員共通の15枚の手札から5枚を選択。手番で1枚プレイするのを3回繰り返せば1ラウンド終了で全4ラウンドでゲーム終了。
このカードプレイフェイズのメカニクスが特徴的で、スタPから順にプロットしておいた手札を公開してプレイしていく際、他Pは手札に持っているカードがあれば義務として公開します。この時手番プレイヤーは1枚に載る2アクションのうち1アクションしかプレイできず、逆に他Pはボーナスとして手番外であるにも関わらず1アクションが実行できます。つまり先手プレイヤーがプロットすると思われるカードを手札に残しておく“読み”が重要になるわけです。ここに他Pの状況を冷静に分析して行動を予想する醍醐味があります。
もうひとつ特徴的なのが各Pが持つ特製の“生産ホイール”によるリソースの管理。全てのリソースをこの機能的に計算されたデザインの個人ボード上で管理するのですが、原料となるリソースと加工品となる製品の管理が自動的に処理されるこの設計は非常に効率的で優秀という印象。この“生産ボード”が重要なツールとして行われる本作のリソースマネジメントは“流石はローゼンベルク”とでも言いたくなるようなシビアで洗練されたもので、僕などは最先端のリソースマネジメントを見た思い。(矢印の多い所謂“矢印ゲー”ですなw)
以上2点が印象に残る、“濃い面白さ”をしっかりと内包しつつも60分で終わる収束性の良さも併せ持った優等生的モダンユーロ。Positive-。
周りに十分に目配せできて初めて活きてくる各種の仕掛けからか、初めてのプレイでは本作の持つ醍醐味を十分に味わうことは困難であろうと思われる敷居の高さはありますが、それは習熟度の問題でしょう。(あと日本語サイコー!やっぱプレイしやすい!)
“マングロービア”(エイリフ・スヴェンソン/ツォッホ/2014年)
ツォッホ発のエッセン新作にして話題作を初プレイ。
メカニクスとしてはワーカープレイスメント、エリアマジョリティ、ハンドマネジメントなど。
ワーカー配置といってもワーカーはひとつだけで、このオンリーワンのコマで二つのアクションと手番順(というか実行順というか)の決定を同時に行うのがまずはミソ。シンプルにして諸要素が凝縮されていることもあって、ここでの選択には実に良質なジレンマが。
また主戦場となる島での争いは格子状に配置されている正方形のマスにコマとなる小屋を配置していくことで行われるのですが、複数のエリアが複雑に(といっても状況は一目で把握できるものですが)絡み合う構造で、一つの小屋が複数のエリアに影響を及ぼすことからここでもアクション選択と同様にひとつの意思決定が複数の結果に影響を及ぼすという構造。
根本部分でのシンプルさはしっかりと守りつつ、しかしながらインタラクションがもたらすプレイヤー間のパワーバランスが盤上に入り乱れる様はまさに良質なドイツゲーム的陣取りの理想形で、刻一刻と変化していく盤上の状況からは一刻も目を離すことができず、夢中になって勝敗の行方に集中しているとあっという間に時間が過ぎ去ってしまう至福の刻をもたらしてくれる良質なゲームという印象。
特に目新しく斬新と思えるメカニクスがあるわけではないですが、既存のものを上手く組合せたり提示したりすることで経験豊かなプレイヤーにも新鮮な楽しさを提供し夢中にさせてくれるゲームが出来上がるのですからこれはこれでデザイナーの力量に他ならないという思いです。
ノンテキストでプレイアビリティも上々の最新ユーロに二重丸を。今のところ特に欠点も見当たらず、またツォッホの最上級コンポーネントもあって評価はPositive。現時点でのエッセン14個人的五傑入り確定。
戦術的にアミュレット特化が強いという評判もあるようですが今回のセッションでは特化型は(10点以上のリードを許して)2位止まり。1位はアミュレットにも配慮しつつバランスよく要所を抑えたプレイヤーで、このあたりしっかりとバランス調整もできているという印象です。(因みにアミュレット完全無視型は最下位でした。)
おそらく新進気鋭のデザイナーだと思われるスヴェンソンは個人的には一躍注目のデザイナーに躍り出たという印象。この人が“マンモス”のオストビー(この人も好き)と共作したのが“ドゥードゥルシティ”なのですよね。
“シェッフェルン”(ライナー・シュトックハウゼン/dlp/2014年)
キックスターター出身のシュトックハウゼンによるエッセン14新作。
ラウンド開始時に配られた4枚の手札。手番になったら①表向きにプレイすることで対応するリムジンを移動する、か②裏向きにプレイすることでキャラを変え、乗っているリムジンを変更するか、この二択を繰り返し、四巡して手札を使い切ればラウンド終了。自分のリムジンが停まっている店のお金が貰えるという寸法。
シンプルを地で行く、ルールの簡単なユーロで、それなりに考えどころやジレンマもあるのですが、結局は他Pの持つ手札次第というのが最終解答という印象は拭えず、まあ淡々とした進行もあって場は選ぶのかな、と。
運次第ですし勝っても負けてもその場限りの後腐れなしで、セッションの間はワイワイと盛り上がれるなら楽しめるかと。まあ僕には存在意義の薄い一作。Negative+。
“世界の七不思議”(アントワン・ボザ/レポス/2010年)
言わずと知れた名作を久しぶりに立卓。
当初は発売されたばかりの拡張“バベル”を立てるつもりだったのですが未プレイ者がいたこともあり、まずは基本、そのあとで“バベル”を、という流れに(とはいえ時間の都合もあり結局“バベル”は立ちませんでしたが…。)。
テックツリーにハンドマネジメントやリソースマネジメント、そしてドラフトの醍醐味が存分に味わえる軽量級文明発展型カードゲーム。
プレイアビリティが抜群に高く、敷居の低さに比して学習効果は高く、プレイ経験が強さに反映される懐の深さも。
収束性の高さ、競技性、リプレイアビリティ、拡張の可能性、戦略の研究欲求などなどの長所が多数見受けられるゼロ年代ドイツゲームのひとつの成果であり、ボザの最高傑作というのが僕の中での本作の立ち位置(あえて不満らしいことをいえばこの邦題かな。ゲームには全く非はないのでなんですがあんまり好きになれないこの感覚。)。Positive。
天邪鬼な性格のせいか判官びいきな性格の成せるわざか、メジャー過ぎるタイトルにはどうしても距離を置いてしまいたくなるのですが、この日の久しぶりのプレイで、まだまだプレイ数が少ない名作だなという思いも生まれ、各種拡張も含めて今後もっと積極的に立卓していきたいという欲求さえ。(でもできるのか!?)
“ニエット!”(ステファン・ドラ/ゴルトジーバー/1997年)
どうしてもひとつはトリックテイクがやりたくて、このタイトルで〆ました。
4スート、1から9の9ランク(ただし1のみ2枚)でマストフォロー、切り札、スーパー切り札あり。
ディールのあとトリックを開始する前にスタPや点数、切り札となるスートなど各種の取り決めを行う“ピサ”や“トリックマイスター”と同系統のタイプで、順番に黒ディスクをボードに置いていくことでひとつひとつの可能性を否定(NJET!)していき、残された各1マスでそのラウンドのルールが決定されるというのが大きな特徴で、ここでの各プレイヤーの動きを注視することもまたペアを組む際の大きな判断材料になっているところがミソ。
勝敗に大きく影響を及ぼすルールが各プレイヤーの投票によって決定されるというのはやはりアドバンストであり、またその高い競技性もあって、ある程度トリックテイクに慣れ親しんだ中上級者向けというのが僕の評価。そして変態的変則的というよりクラシックな保守本道を進んでいった結果としてのひとつのカタチという感覚を僕は持っています。(などとエラそうに言ってますがトリックテイク
の森はあまりにも深淵で、この持論さえ簡単に崩壊しかねない感覚もまたあるのですが…。)
ドラの完成されたシステム、フォービンケルの美しく品のあるアートワーク、そしてゴルトジーバーの高品質なコンポーネントと三拍子揃った名作。Positive-。
以上7タイトルを終日にわたって代わる代わる立卓した一日でした。ではまた来月!
0 件のコメント:
コメントを投稿