月1で開催している土曜日の自宅ゲームスペース“UDA”での卓上ゲーム研究会、この日は重いのを先にやってしまおうということで“ケメト”から開始。午前中はこれ一本に終始。
フランスのマタゴーからの叩き合いゲーム。
陣取り的ながら“自分の陣地”という概念は希薄というか、まあ自分の軍隊が存在するエリアは自分の陣地なんですが、神殿やピラミッドといった重要なファクターも含めて、その所有権は流動的なところが新鮮で、盤面のパワーバランスも含めた状況が刻一刻と変化する、ダイナミックなマルチ。
方針としても土地に固執せず、軍隊を構成するユニットの補充も比較的容易なので、手薄な箇所があれば消耗を気にせずガンガン攻めて恒久1勝利点を狙っていくのが本作のオーソドクスなプレイの方針なのかもしれません。その意味で一部のマルチに顕著な自土地を守るプレッシャーからは解放されているのがゲームに一種の明るささえ齎しているようで、一種爽快なプレイ感を感じる向きもあるかも。まあ後腐れなく殴り合いましょう、ということですねw
短時間ゲーム(という言葉でルール上規定されていますが標準といって差し支えないと僕は思います)であれば8点先取で終了フラグで、点数に所有権が流動的な一時点と、けして侵害されることのない恒久点の二種類があるのも面白いメカニクス。
その他、使い捨ての神性介入カードや恒久的に能力を付与するパワータイルなどがゲームにボリュームを与えています。これら全てがテキストなし、すべてアイコンで効果が表記されているのはプレイアビリティに貢献しているかと。
軍隊を強力にバックアップする“怪物”のフィギュアの造形も細部まで手抜きのないもので、システムとともにアートワークやコンポーネントも含めた全体的な完成度は高く、パブリッシャーの商品開発力が十分なものであることが窺い知れる一作。
リプレイバリューも十分の良作でした。
フェルドカッターによる獲得トリック数予想系トリックテイク、“ジュピターのもとに”。
ジュピター、ジュノー、ゴッド、生贄などの少なくないユニークな特性のあるカードのせいか、ややファットでとっつきの悪い印象があったのですが、実際には贅肉などない、シンプルとさえ思える充実の正統派トリックテイクでした。
“予約”というリスクとリターンのある良質なアイデアが盛り込まれていることもあって、(他プレイヤーの予想数でもOKというメカニクスながら)予想した獲得トリック数を狙ってのプレイには針の穴に糸を通すかのような痺れるような緊張感があり、セッションは終始引き締まったものに。(それゆえセッション後には疲労感も残りましたが…)
トリックテイクが持つ本来の面白さを堪能できる(これまた)当たりのゲームで、今後も機会があれば棚から取り出して立卓、永く付き合っていきたい良質なトリックテイク。
アレックス・ランドルフによる蟻の世界をテーマにした多人数アブストラクト、“シシミジ”。
一手番に3つのコマを配置し、拠点となる7つの蟻塚を最初に接続したプレイヤーの勝利という、ルールは簡潔極まりないもの。
今回のセッションは、するすると、過疎っていたスペースを横断されてあっけなく終了し作品の真価に迫る間もなく終了してしまったかも。
油断していたというか、各自が己の勝利ばかりを念頭に独りよがりなプレイに走りすぎたきらいはあったのかもしれない。
しかし多人数アブストラクトはデザインの難しいジャンルだなー、と。お仕事問題とか、避けられない局面も少なくなく、なんというかその場面が如実にクローズアップされすぎる気がします。
自分自身は非常に好きな一ジャンルなんだけど、多人数アブストラクト。
これは注目の国産同人カードゲームの新作、“Welcome!”。
手番に行えるのはシンプルな三択というか実質はほぼ二択で、システム的株ゲームの面白さを短時間で味わえる佳作ではないか。
曖昧模糊とした展開の行方の中で、しかしプレイヤーは最善手は何かということ(答えはあるのか?)に神経を払う。
シンプルで美しいアートワークがまた良くできていて、本作のテイストにドンピシャ。
非常に不思議なプレイ感で、今のところ評価を決定しにくいところはあるけれど、国産同人界に期待のニューカマー登場とは言える。次作以降にも注目していきたい。
巨匠アレックス・ランドルフ翁による“トロイの木馬”。
御大の秀逸なギミック、アイデアを堪能できる一作だが、この無鉄砲な運要素の高さはさすがに最近の洗練されたピュアユーロに慣れ親しんだプレイヤーには暴力的とも感じられ、閉口する向きもあるやも。
だがこれこそゲームというアトモスフィアには、言葉本来の意味でのゲームが好きであればあるほど魅了されるような、強力なオリジナリティがあり、一部での高い評価にも納得できる。
本作のようなタイトルに出会うと“ゲーム性”などという掴みどころのない曖昧な言葉を引用したくもなる。そして“ゲーム性”という言葉の存在を信じてもいいのかも、とも。
また論理よりも直感でもってゲームをデザインできる人もいるのであって、でもそれは天賦の才能なのであり、研究や努力でその境地に辿りつけるものなのかは甚だ疑わしいと勝手に思いを馳せるのだった。
いやしかしたった二つのコマの色を覚えておくことが、なぜこれほどにも困難なのだろう。
ピーター・ハウズの新作、“フランシス・ドレイク”で〆。
巨大なボードや種々のコンポーネントから重量級を予想し尻込みしてしまいましたが、聞いていたとおり、実際には至ってシンプルなWPとプロットの二段構えの構図で、容量としては中量級クラスか。
ほぼテキスト皆無、情報の言語依存度が低く、各プレイヤーの現状への目配せまで注意をはらっても大きな負担にはならず、実にプレイしやすい本格派というのが第一印象。
第一ステップともいえるWPの駆引きから、第二ステップでの航海をいかに無駄のない効率のよいものにするかという全体の構成が実に見事で面白く良くできており、ハウズは実力派デザイナーの一端を担うに十分な力量の持ち主であると思いました。
目立った特殊効果カードなどがないことから最近のファットなタイトルに慣れた一部のフリークには物足りないかもしれませんが、それはそれ、このシンプルさこれこそがハウズのデザインで、骨組みのしっかりしているゲームであればリプレイバリューは後からついてくるのだ、という印象。
ということでかなり好意的な評価でしたが、今はもう少しプレイを重ねて粗も見つけたいというひねくれたフリーク心理も働いていたりします。さて今後のプレイでどう評価が動くでしょうか。
以上にてこの日のUDAテーブルゲーム研究会は終了。クローズ会は濃密ですね、いつも思いますが。
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